天鐘
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 古代中国の五行説によると、森羅万象は木・火・土・金・水の「気」で成り立つ。それぞれの要素を踏まえて春夏秋冬を配し、変化を促す意味を持つ土は四季の間にはめ込んだ。雑節の一つ・土用の由来とされる▼土用といえば夏。夏といえばウナギ。五行において季節に適した食べ物を導くのは十二支と色である。夏であれば丑(うし)の日と黒。万能学者・平賀源内の知恵は言い伝えにも合致し、ウが付く黒い魚を定番にした▼土用は季節の変わり目に当たることから、必ず年に4回やって来る。立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間。だが生活に溶け込んでいる夏に比べ、春秋冬の存在感は薄い。きょうは秋の土用の入りである▼酷暑から一転して気温が下降線をたどり、大きな変動によって体調を崩しやすい。食欲の秋とはいうものの、夏にたまった疲れも出やすい。健康を保ちつつ寒い冬を迎える食べ物とは。秋は辰(たつ)の日と青だという▼タが付く大根は胃の調子を整え、抗酸化作用もある。脂乗りが良いサンマには青魚ならではの必須脂肪酸が。この時期にアツアツのおでん、大根おろしが添えられた焼き魚が恋しくなるのは偶然でない気がする▼魚介類に限って補足すると、春土用は戌(いぬ)の日でイカ、冬土用は未(ひつじ)の日でヒラメ。資源枯渇への懸念がウナギやサンマと共通する。本来は四季の移ろいを伝える暦日が、危機感を訴えているようでもある。