天鐘(9月6日)

漫画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬の名前を見て、子供ながらにすごいと思ったものだ。「雄々しく飛ぶ馬」である。当時、男の子のヒーローとして、これ以上のものはなかった▼同じような驚きがこの人にもあった。今季限りでの引退を表明した、阪神タイガース.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 漫画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬の名前を見て、子供ながらにすごいと思ったものだ。「雄々しく飛ぶ馬」である。当時、男の子のヒーローとして、これ以上のものはなかった▼同じような驚きがこの人にもあった。今季限りでの引退を表明した、阪神タイガースの藤川球児投手。なんと言っても「球児」である。少年時代に選んだ道を、期待通り真っすぐに歩んできた▼武器にしたのも剛球一本。手元で浮き上がるような速球は「火の玉」と呼ばれた。まさに火を噴くようなボールで三振の山を築いていく。彼の右腕がうなるたびに甲子園は揺れ、多くの野球少年が目を輝かせた▼苦労人でもある。入団当初は鳴かず飛ばず。投球フォームを変え、地味な役回りの「中継ぎ」に活路を求めた。悩んだ末にたどり着いたのは、1球に魂を込めること。22年間こだわった真っ向勝負の原点である▼野球は単純なスポーツだ。突き詰めれば、速い球で空振りを取るか、それを打ち返すかである。小細工なしの力勝負はベースボールの大もと。それが彼のスケールに合っていたのだろう。永遠の野球小僧、トラのヒーローが去って行く▼昔、父親が草野球でノーヒット・ノーランをやった翌日に生まれたことから、その名をつけたという。縁は異なもの。漫画のようだ。連日の勝利にファンが飲めたうまい酒。その何割かは、お父さんのおかげでもある。