天鐘(9月7日)

燕(つばめ)は春を告げる鳥である。主に東南アジアで越冬し、日本に里帰りする。移動距離は5千キロとも。眠りながらの長旅と知ってさらに驚く。脳の左右を交互に休ませつつ飛ぶ「半球睡眠」は渡り鳥の特殊能力である▼人間はカラスなどの天敵から身を守って.....
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 燕(つばめ)は春を告げる鳥である。主に東南アジアで越冬し、日本に里帰りする。移動距離は5千キロとも。眠りながらの長旅と知ってさらに驚く。脳の左右を交互に休ませつつ飛ぶ「半球睡眠」は渡り鳥の特殊能力である▼人間はカラスなどの天敵から身を守ってくれるガードマン。だから人目につく民家や商業施設に営巣する。その恩返しだろうか。古くから幸運の使者と伝えられる。〈この家に福あり燕巣をつくる〉山口誓子▼燕は夏を告げる鳥である。いよいよ卵から新たな命が誕生する。大きく口を開け、にぎやかに甘えるヒナは食欲旺盛。餌やりは一日当たり300回というから大変な重労働である。親鳥は役割を分担して子育てにいそしむ▼そして巣立ち。空中で餌を捕るのは至難の業。うまく飛べるように何度も特訓を重ねる。急旋回したり急降下したり。高く空に舞ってスイスイと泳げたら一人前だ。〈飛び習ふ青田の上や燕の子〉堀麦水▼燕は秋を告げる鳥である。繁殖期が終わると巣を離れ、ヨシ原などで仲間と群れを形成。体に栄養を蓄えて渡りに備える。草木が朝露をまとう時季を迎えた。きょうは二十四節気の「白露」。その末候は「玄鳥去(つばめさる)」である▼南方への旅立ちは近い。だが季節感を狂わせる記録的な残暑、気候変動を思わせる強大な台風である。異変に少し混乱しているかもしれない。〈帰りかけて又立ち戻る燕哉〉正岡子規