天鐘(10月9日)

人事の常套(じょうとう)句「適材適所」。昇進に横滑り、降格と悲喜こもごも。異動させられる側は人生の“縮図”を見せられる思いで平静ではいられない。だが、人事権を持つ側は、この便利な四文字熟語がある限り“鬼に金棒”である▼菅義偉首相が国の特別機.....
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 人事の常套(じょうとう)句「適材適所」。昇進に横滑り、降格と悲喜こもごも。異動させられる側は人生の“縮図”を見せられる思いで平静ではいられない。だが、人事権を持つ側は、この便利な四文字熟語がある限り“鬼に金棒”である▼菅義偉首相が国の特別機関「日本学術会議」が推薦した6人の新会員候補を拒否した。会議が法律に沿って選んだ候補に異議を唱え、任命を拒んだから問題は厄介だ▼37年前、中曽根康弘首相は「任命は形式的で拒否はしない」と答弁している。だが、どうやら数年前から“形式”を覆して「推薦に従う義務はない」との見解を集約。虎視眈々(たんたん)と人事権の奪取を窺(うかが)っていたようだ▼首相は「会員は特別公務員で年10億円の国費を投入している」と国の監督権を強調。これまでの推薦と任命を「悪しき前例」とまで言い切った。意に沿わない学者を挙げてくる会議への拒否感が透けて見える▼会議は首相が狙ってきた“獲物”のようで、睨(にら)まれた6人は安保関連法や「共謀罪」創設を批判した学者達。学問の自由への政治介入も懸念されるが、「全く関係ない」という得意の全否定とノーコメントを貫く▼今回は「適材適所」で済みそうもない。人権ばかりか学問の自由と政治の介入、会議と政権という異なる体質の衝突である。首相が得意技“無言の圧力”を繰り出すなら、またあの「忖度(そんたく)」という“強毒ウイルス”が蔓延(まんえん)する。