【高レベル最終処分場・調査応募表明】〈評論〉町村の判断縛れぬ現実 青森県にも突き付けた課題

北海道の寿都町と神恵内村が、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定第1段階に当たる文献調査に進む方針を示し、長く停滞していた「核のゴミ」問題が動き出すことになった。寿都の応募検討が表面化してから約2カ月。一連の議論で浮き彫りになったのは、道の.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
北海道の寿都町と神恵内村が、高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定第1段階に当たる文献調査に進む方針を示し、長く停滞していた「核のゴミ」問題が動き出すことになった。寿都の応募検討が表面化してから約2カ月。一連の議論で浮き彫りになったのは、道の「核抜き条例」で町と村の判断を縛り切れなかったという現実だ。[br][br] 道には、核のゴミについて「持ち込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難い」と記し、拒否の姿勢を明確にした条例がある。核のゴミの地層処分の手法を調査する「幌延深地層研究センター」(北海道幌延町)の受け入れに対応して、2000年に制定された。[br][br] ただし条例に強制力はなく、文献調査への応募を押さえ込むこともできない。寿都の片岡春雄町長は「条例を理由に核のゴミの問題を無視して良いのか」と指摘。鈴木直道道知事の条例順守の呼び掛けにも、考えは変わらなかった。[br][br] 周辺漁協なども反発する中での応募に批判があるのは当然だろう。だが、議会の過半数が賛同し、町村のトップが下した決断である。核のゴミを拒絶する条例が、調査の実施を求める選択を止められなかった事実は重い。[br][br] 今回のケースは、青森県にも当てはまりはしないか。県には国と交わした「青森県を最終処分地にしない」とする確約がある。県議会には受け入れ拒否の条例制定を求める声もある。[br][br] だが県内では誘致論がたびたび表面化。07年に東通村の越善靖夫村長が最終処分場の受け入れ議論を排除しない考えを示し、11年には野辺地町の亀田道隆町長(当時)が情報誌のインタビューで誘致に言及した。[br][br] いずれも、後にその考えを否定しているが、誘致による「恩恵」を当てに、今後もこうした動きが出ないとは限らない。[br][br] 文献調査でもたらされる交付金は最大20億円。寿都や神恵内が調査を望むのも、厳しさを増す財政的な側面が大きい。人口減少で地域活力が低下する中、生き残りの手段として調査に名乗りを上げようとする自治体を抑止する効力が、確約にはあるのか。一方、確約が応募を妨げることは自治の否定にならないのか。[br][br] 歴代の県知事が国と繰り返し交わしてきた確約は絶対に順守されるべきだ。六ケ所村に一時貯蔵されている核のゴミが最終処分場へ搬出されることを、県民は切望している。そうだとしても核抜き条例の効力が問われた北海道の例は、青森県に重い課題を突き付けたように思えてならない。