天鐘(9月16日)

安倍晋三首相の7年8カ月はアベノミクスに始まり、アベノマスクで終わった感がある。その安倍さん、こだわりの布製を最後にはあきらめた。「今はいろいろと出ていますから」▼思えば、半年前はマスク不足で大騒ぎだった。どの店も品切れで、朝から長蛇の列が.....
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 安倍晋三首相の7年8カ月はアベノミクスに始まり、アベノマスクで終わった感がある。その安倍さん、こだわりの布製を最後にはあきらめた。「今はいろいろと出ていますから」▼思えば、半年前はマスク不足で大騒ぎだった。どの店も品切れで、朝から長蛇の列ができたことを思い出す。いまや広く世に行き渡る。その習慣のなかった米国をはじめ、世界中が既にマスク姿だ▼白一色だった色は随分とカラフルになり、デザインもユニークだ。機能にも工夫が凝らされ、もはや一つのファッションである。コロナ禍で一躍、存在感を増した四角い布。そこには、着ける人の個性や考え方までもにじむ▼大坂なおみ選手のマスクは印象的だった。人種差別の事件に抗議し、犠牲者の名を染め抜いた。賛否はあったが、決勝まで貫く。「多くの人が考えるきっかけに」と、自らの思いをマスクに込めた▼若者たちの間に“だてマスク”がはやりだしたのは10年ほど前だろうか。風邪や花粉症に関係なく、顔を隠すためだけの着用である。なるべく目立たず、自分だけの世界に浸る。一人閉じこもる姿は内向きの象徴にも見えた▼今は多くの華やかな口元が街を行く。口を覆うその役目から、「沈黙」を連想させるイメージも様変わりである。マスクが発するメッセージは、時にご主人さま以上に饒舌じょうぜつだ。マスクも令和の新時代―そんな思いを強くする。