天鐘(7月28日)

眼光鋭く緘黙(かんもく)で有名だった川端康成が、女優の中村メイコさんに悩みを打ち明けた。それは「鼻糞(はなくそ)をほじくる癖」。以来、中村さんは名作『雪国』への印象が妙に変わってしまったとか▼前にも紹介したが、筆が止まると鼻毛を抜いて原稿用.....
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 眼光鋭く緘黙(かんもく)で有名だった川端康成が、女優の中村メイコさんに悩みを打ち明けた。それは「鼻糞(はなくそ)をほじくる癖」。以来、中村さんは名作『雪国』への印象が妙に変わってしまったとか▼前にも紹介したが、筆が止まると鼻毛を抜いて原稿用紙に張り付けた夏目漱石。森鴎外は欧州人も鼻をほじると短編『大発見』で証明した。「なくて七癖」。顔の真ん中にでんと座る鼻に纏(まつ)わる癖が圧倒的だ▼嘘や盗みは別にして、貧乏揺すりや咳(せき)払いなど癖のほとんどが無意識。ある調査によると、人が公の場で1時間に顔に触る回数は平均3・6回。授業中の児童生徒は眠い目を擦(こす)り、頬杖(ほおづえ)を突き…何と23回に上った▼新型コロナの感染対策として手洗い、うがいに3密回避を学んだ。半年が経って浸透してきてはいるが、東京医科大など研究グループの調査では「目や口、鼻に触らない」という習慣づけは73%にとどまった▼手洗いや人混みを避け、人との間隔は2メートル、マスクに咳エチケットの8割超はできているのに、肝心要の“感染の窓口”が欠落。雑菌が付着した手が無意識裏に七癖を媒介して体内へ。新しい生活様式も台無しだ▼そう言われると逆に目や鼻が痒(かゆ)くなる。他の癖に気をそらせばいいとは言うが無意識を意識化するのは難しい。そのための「マスク」や「化粧」だとの指摘も。究極の答えは「触るなら手を洗ってから」と振り出しに…。