天鐘(7月22日)

この季節になると、子供のころ、近くの小さな川で遊んだことを思い出す。田んぼの脇で、タニシがいたから用水路だったかもしれないが、皆、「川」と呼んでいた。昭和40年代のことである▼笹舟を作って、川面に浮かべる。それが流れていくのを見ているだけで.....
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 この季節になると、子供のころ、近くの小さな川で遊んだことを思い出す。田んぼの脇で、タニシがいたから用水路だったかもしれないが、皆、「川」と呼んでいた。昭和40年代のことである▼笹舟を作って、川面に浮かべる。それが流れていくのを見ているだけで楽しかった。日の光に輝く清流、心地よいせせらぎの音。夏の穏やかな流れは、まるで自分に笑いかけているように感じたものである▼「春の小川」に「めだかの学校」。唱歌や童謡によく川が取り上げられたのは、以前はそれが人々の生活の中にあったからだろう。古くは炊事や洗濯に川の水を使ったし、夏場には子供たちの絶好の遊び場になった▼時は流れて、その様子も随分と変わった。多くはコンクリートで固められ、水辺の生き物たちもいなくなった。無論、暮らしの安全のためだが、昔のままの優しい顔で流れる川は今、どれだけあるだろう▼7月は河川愛護月間に当たる。美しい川の姿を未来へ残そうと、ボランティアの清掃活動などが行われている。とはいえ、あまりなじみがないのは、人間の川との関わりが薄れてきているせいなのかもしれない▼近年、7月は大雨で川の表情が一変することが多くなった。今年は九州でまた暴れている。温暖化も一因となれば、人間の営みに思いが至る。川のほとりに立ち止まって考えてみたい。優しきあの微笑(ほほえ)みを守る手だてを。