天鐘(8月28日)

映画の世界で、邦画の「時代劇」は健在だが、ガンマンが早撃ちを競う「西部劇」は絶えて久しい。米国の西部開拓時代に主人公の白人が無法者や先住民をやっつけるという筋立てで、半世紀前に姿を消している▼映画『荒野の七人』『OK牧場の決闘』『シェーン』.....
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 映画の世界で、邦画の「時代劇」は健在だが、ガンマンが早撃ちを競う「西部劇」は絶えて久しい。米国の西部開拓時代に主人公の白人が無法者や先住民をやっつけるという筋立てで、半世紀前に姿を消している▼映画『荒野の七人』『OK牧場の決闘』『シェーン』、テレビ映画『ローハイド』…。主人公のクリント・イーストウッドやジョン・ウェインらの名演技が忘れ難い▼舞台は1860年代の米国西部。開拓に乗り込んだ白人が無法者や先住民と対決して勝利するという単純な筋書きで、ハリウッドが作った独自のジャンルとか。多くの困難に果敢に立ち向かう開拓者精神が受けた▼だが、白人は「善」で、先住民のインディアンが「悪」という勧善懲悪が1960年代から問題視され、西部劇自体の構図が崩れ始めた。先住民が侵略者から自分の土地を守ろうとしただけだから当然である▼北米大陸発見後の17世紀、植民地目当ての英国人が入植した頃は100万人の先住民がいた。だが、彼らの虐殺と持ち込んだ疫病で19世紀には絶滅寸前。史実の“西部開拓”は先住民迫害の歴史そのものであった▼米国で白人警官の暴行で黒人男性が死亡。同様の事件が続く。全米テニス前哨戦で大坂なおみ選手が「私は選手以前に黒人女性」と準決勝をボイコットした。歴史に刻まれた肌の色を巡る不条理は、古くて新しく我々にも身近な問題である。