天鐘(10月5日)

コロナ禍における緊急事態宣言下で、やり玉に挙げられたのがパチンコ店。他業種の施設よりも高い換気機能を有するが、集客力が高く「3密の典型」とされる。疑心暗鬼から世間の“営業監視”も強まった▼科学的根拠の提示や店名公表など、行政の情報発信の在り.....
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 コロナ禍における緊急事態宣言下で、やり玉に挙げられたのがパチンコ店。他業種の施設よりも高い換気機能を有するが、集客力が高く「3密の典型」とされる。疑心暗鬼から世間の“営業監視”も強まった▼科学的根拠の提示や店名公表など、行政の情報発信の在り方には議論の余地があろう。ただ不要不急の外出自粛が叫ばれる中、やはり開店前の行列は奇異に映った。垣間見えたのはギャンブル依存症の広がり▼厚生労働省の調査によると推計320万人。アルコール依存症を上回るとも。特徴は「三猿」だという。自分が置かれた現状や家族の苦しみを見ない。胸の内に抱えた思いを言わない。周囲の忠告を聞かない▼ギャンブル等依存症対策基本法の施行はちょうど2年前。政府が統合型リゾート施設(IR)の整備へ突き進んでいた頃である。立ち直りを支援する専門施設の充実など課題は多いものの、目立った進展はない▼抵抗感が根強いカジノを是とすべく世論誘導を狙った―と勘ぐってしまう。一方で渡航制限が敷かれる“鎖国”の現状を踏まえると、外国人観光客らを呼び込むIRの前提は崩れつつある。構想実現への動きは急停止したまま▼ギャンブルへの依存とインバウンドへの依存。日常生活に変化を強いた感染症は、日本が成長戦略の切り札に位置付ける一大事業の危うさと脆(もろ)さも浮き彫りに。存在意義が揺らいでいる。