天鐘(9月24日)

「百日紅(ヒャクジツコウ)」と書いて「サルスベリ」と読む。淡紅色の美しい花だからそのままの方がお似合いなのに、猿も登れないほどつるつるの樹幹からサルスベリの和名で呼ばれている▼中国唐代の都長安の宮廷(紫微(しび))にたくさん植えられていたた.....
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 「百日紅(ヒャクジツコウ)」と書いて「サルスベリ」と読む。淡紅色の美しい花だからそのままの方がお似合いなのに、猿も登れないほどつるつるの樹幹からサルスベリの和名で呼ばれている▼中国唐代の都長安の宮廷(紫微(しび))にたくさん植えられていたため、「紫薇(シビ)」とも呼ばれる。夏の強烈な日差しにも負けず、“散れば咲き”を繰り返して長く咲き続けることから「百日紅」の漢字が当てられた▼その昔、王子が恋人に「百日後に会おう」と誓って旅に出た。だが、戻ると恋人は既に亡く、葬られた墓から木が生え、薄紅の花を咲かせ続けた―。朝鮮半島には百日紅にまつわるこんな悲恋物語が今に残るとか▼待ち侘(わ)びる恋人の思いから花言葉は「あなたを信じる」。何とも詩的な百日紅だが、樹幹を主役にサルスベリと読んだ途端、猿も木から落ちる―の例えから、花言葉も「不用意」や「愛嬌(あいきょう)」とガラリ一変する▼花は白や淡紫もある。縮れた花弁が房状に咲くから「雄弁」の花言葉も。シリアスにコミカル。人間の創造力の逞(たくま)しさと感性の豊かさに驚かされる。高木にならず、枝ぶりを加減すれば公園木や庭木に最適らしい▼八戸公園内の百日紅は7月下旬に花を付け、今も健気(けなげ)に散れば咲きを繰り返している。百日持つかどうかは微妙だが、紅葉を前に緑一色の園内に一際艶(あで)やかな彩りを添えている。〈散れば咲き散れば咲きして百日紅 加賀千代女(かがのちよじょ)〉。