天鐘(7月26日)

茎はしなやか。苞(ほう)が流れるように曲線を描く。花の中心から甘い香りが漂う。古いギリシャ語で美を意味するカロス、修道女の付け襟が名前の由来とも。「カラー」は気品をまとう優雅な花▼つくりはミズバショウに似ている。英語表記ではユリの名も冠する.....
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 茎はしなやか。苞(ほう)が流れるように曲線を描く。花の中心から甘い香りが漂う。古いギリシャ語で美を意味するカロス、修道女の付け襟が名前の由来とも。「カラー」は気品をまとう優雅な花▼つくりはミズバショウに似ている。英語表記ではユリの名も冠する。華燭(かしょく)の典を祝う花、暮らしを彩る切り花として人気を集める。純粋無垢(むく)な白は「凜(りん)とした美しさ」。その花言葉には説得力がある▼厳かな夜の国立競技場。光彩に純白の衣装が映える。前を見据えて等身大の言葉を紡いだ。東京五輪の1年前イベントで、競泳女子の池江璃花子選手が世界にメッセージを発信。佇(たたず)まいに清麗なる強さを見た▼2018年アジア大会で日本史上最多の6冠。個人11種目で日本記録を保持する。当時18歳の若きエースが白血病と診断されたのは昨年2月。東京五輪の夢は断たれ、10カ月に及ぶ過酷な闘病を強いられた▼何度も吐いた。髪の毛も抜けた。周囲の励ましを支えに苦難を乗り越えた。プールに復帰した当初は得意のバタフライですら四苦八苦。現在地は中学生の頃の自分だという。それでも泳げることが楽しい。4年後のパリ五輪を目指し、手探りの挑戦が続く▼カラーは色によって花言葉が異なる。ピンクは「情熱」、紫なら「夢見る美しさ」。自身の境遇と重ね合わせて、コロナ禍の世界へ「希望の力」を届けた池江選手である。どの色も似合う。