三沢市中心部の壱番街商店街で、飲食店などが店舗前の歩道を営業に利用する取り組みが始まった。道路占用許可基準を暫定的に緩和する、国の緊急措置を受けた動き。新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた経営の立て直し、街のにぎわい創出につなげてほしい。[br] 国は地方自治体と地域住民・団体が一体で取り組む沿道飲食店などの路上利用に対し、占用許可基準を緩和。店舗外に仮設施設を設置し、飲食物などを提供できるようにした。占用料は施設付近の清掃により免除される。期間は11月30日まで。[br] 壱番街商店街の取り組みでは、市役所から三沢基地正面ゲート前へ延びる市道の一部区間に並ぶ13店が参加。区間内の歩道は幅約5・2メートルで、うち店舗前の1メートル程度を利用できる。[br] 通行人の妨げになる場所や点字ブロック上に施設を設置しないなど、安全で快適な歩行空間の確保は必須条件。騒音や迷惑行為の防止にも努めなければならない。[br] 留意点は少なくないが、ある飲食店関係者は「店の外を使えるのはプラスになる」と話す。店内は他の客との距離が近くなりがちで、入店をためらう人もいる。天候に左右されるとはいえ、開放感のある屋外でサービスを提供するのは一つの売りになる。新たな顧客を獲得できる可能性も高まる。[br] 「新しい生活様式」は、いわゆる「3密」の回避を促す。主に個人事業者が営む小規模店舗の多くは空間が狭く、周囲の敷地にも余裕がない。距離を確保するために客席数を制限すれば、収入の減少は避けられない。予防対策の経費も大きな負担になっている。[br] 今回の緊急措置は、活路を見いだしたい店側にとって心強い支援だろう。新型コロナを前提とした安全で快適なまちづくりは、地域に対する愛着を高めて商店街が求心力を回復するきっかけになり得るのではないか。感染症による苦境を、活性化への転機にしたい。[br] 一方、新しい生活様式を今後の標準とするのであれば、屋外の公共空間を活用できる選択肢は、サービスと安心を提供したい小規模店舗が営業を続けていく上で欠かせない。[br] 緊急措置は期間限定。国は成果を検証し、感染状況も踏まえて今後の在り方を検討する方針だ。さまざまな変化が求められる時である。小規模店舗の事業や経済を守るためにも、安全と秩序を維持しつつ、公共空間を柔軟に活用できる新たな仕組みを積極的に検討してほしい。