天鐘(7月24日)

1964年の東京五輪が世界に発したメッセージは明快だ。「敗戦から立ち直った日本」。記録映画『東京オリンピック』に、再開発のため古い東京の建物を取り壊す場面があるのが印象深い▼本来ならきょう、2回目の東京大会が開会式を迎えるはずだった。日本中.....
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 1964年の東京五輪が世界に発したメッセージは明快だ。「敗戦から立ち直った日本」。記録映画『東京オリンピック』に、再開発のため古い東京の建物を取り壊す場面があるのが印象深い▼本来ならきょう、2回目の東京大会が開会式を迎えるはずだった。日本中が熱気に包まれていたに違いない。コロナで1年延期になったのはご承知の通り。猛暑は大丈夫かと心配したのが今となっては懐かしい▼代表選手が再スタートへ向かう中、気になるのは“五輪熱”の冷え込みだ。世論調査では「来年夏に開催すべき」は4分の1。今はオリンピックどころではないというのが本音なのだろう▼国内はもとより、海外の感染拡大も止まらない。改めて思うのは日本だけでは祭典は開けないという、当たり前の事実。肝心のリーダーには「コロナはただの風邪」「消えて無くなる」との人もいて、基本の対策すら心もとない▼各国で今後、ワクチンの争奪戦が始まるという予想もある。五つの輪が互いに手を取り合ってこその「五輪」。アスリートたちの4年に一度のドラマを待ち望みつつ、沈んだ空気の重さが気に掛かる▼「復興」「コンパクト」、そして「おもてなし」。気がつけば、あのとき世界に発信したメッセージは既に遠くにかすんでいる。深い霧の中を走って行く聖火。「東京2020」は後に、どんな大会だったと記録されるのだろう。