天鐘(8月24日)

まだ残暑が続くらしい。冷たいものに頼ってしまうが、怖い話も一服の涼になるという。恐怖や不安で極度に緊張すると、交感神経が反応する。末端の血管が収縮して血流が低下、結果として寒気を感じる▼江戸時代の娯楽といえば歌舞伎だった。だが夏は客の入りが.....
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 まだ残暑が続くらしい。冷たいものに頼ってしまうが、怖い話も一服の涼になるという。恐怖や不安で極度に緊張すると、交感神経が反応する。末端の血管が収縮して血流が低下、結果として寒気を感じる▼江戸時代の娯楽といえば歌舞伎だった。だが夏は客の入りが芳しくない。大物役者は休暇。若手が宙づりで幽霊を演じるなど、大仕掛けで舞台を盛り上げた。「涼み芝居」が人気を集め、怪談は夏の風物詩となる▼「四谷怪談」も「牡丹(ぼたん)灯籠」も激しい怨念の背景に浅ましい欲を描く。人生訓を問い掛けるようでもある。一方、子どもが創造した独自の文化とされるのが学校の怪談。「トイレの花子さん」などの妖怪譚(たん)である▼舞台はイメージを共有しやすい学校。お化けは時に危害を加えるが、出現場所が限られ回避が可能である。逃げ道を設けることによって、恐怖は好奇の娯楽に発展。素の感情をさらけ出し、子どもたちの距離は縮まる▼人間関係の構築に意義を見いだすのは山口県立大の吉岡一志准教授。「子ども文化論」を研究し、学校の怪談に関する著書も多い。交流や相互理解に欠かせない存在だとすれば、怖さも少し和らぐ▼最近の妖怪はパソコンから出没。まさに時代の流れである。しかし噂話が爆発的に広がることは少なく、子どもの付き合いが表層的になったのが要因とも。あの花子さんも暗闇で世の風潮を嘆いている?