使用済み核燃料の再処理に伴って発生する高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定を巡り、第1段階の文献調査に北海道寿都町が応募を検討している。いわゆる「核抜き条例」を持つ道内では、風評被害の懸念などと相まって反発の声が上がる。[br] 2007年に高知県東洋町が手を挙げた際は、町内外から批判が殺到して混乱。出直し町長選にまで発展し、勝利した反対派が後に取り下げた。[br] 状況が重なって見える。民意は尊重されるべきだが、意思表示自体が即座に否定される風潮に危惧を抱く。[br] 処分に道筋を付けることは、原発を利用してきた現世代の使命である。現状を見るに、いまだ国民の理解は深まっていない。課題を未解決のまま、原子力利用を進めてきた国の責任は指摘するまでもない。[br] 最終処分が法制化されて20年。地盤の適地を示す「科学的特性マップ」に基づいた対話型説明会の開催など、国や原子力発電環境整備機構(NUMO)による近年の取り組みには、識者からも評価する声が聞かれる。[br] 求められるのは熟議とスピード。この二律背反を成し遂げるのは難しい。300メートル以深の地中で数万年にわたり人間社会から隔離することが可能かという不安は、各地の説明会でも尽きない論点だ。日本学術会議がこれまでまとめた提言でも「現時点での科学的知見の限界」と指摘される。[br] 財政支援ありきの選定枠組みも問題視されている。文献調査だけでも受け入れると最大20億円の交付金を見込め、寿都町にはこれを引き出す狙いがある。人口減少が進む厳しい財政事情にあって、町側の意図を一概には否定できないだろう。[br] こうした課題は地方にあまねく共通する。これからも調査応募が取り沙汰される度、地域に混乱をもたらす事態を繰り返すのか。同会議は選定手続きを再検討する必要性にも触れる。[br] 六ケ所村で高レベル放射性廃棄物を預かり始めてから四半世紀がたち、45年には最初の貯蔵期限が訪れる。果たして、最終処分地に搬出する約束は着実に履行されるのか。疑念を抱く県民は少なくない。[br] 折しも日本原燃の使用済み核燃料再処理工場(同村)が、原子力規制委員会の安全審査に合格した。22年度上期を目指す工場完成が、にわかに現実味を帯びる。[br] 操業すれば新たに「核のゴミ」が発生する。最終処分地の選定が、これ以上遅延することは許されない。