天鐘(10月18日)

ほ乳類なのに鳥のように空が飛べる。身近な所に生息しているのに夜行性で目にする機会が少ない。謎に包まれた生態。海外には人の血を吸う種もいる。そのせいなのかコウモリには不気味な印象が付きまとう▼一晩で200~300匹の虫を平らげる大食い。時にフ.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 ほ乳類なのに鳥のように空が飛べる。身近な所に生息しているのに夜行性で目にする機会が少ない。謎に包まれた生態。海外には人の血を吸う種もいる。そのせいなのかコウモリには不気味な印象が付きまとう▼一晩で200~300匹の虫を平らげる大食い。時にフンや騒音が問題になるものの、農作物を食い荒らす害虫を退治する益獣でもある。“親戚”の黄金バットやバットマンに負けず劣らず人助けに活躍している▼「コウモリ博士」と呼ばれた生物の先生がいた。元三戸高教諭の向山満さん。好奇心が旺盛で飽くなき探求を「ロマン」と語っていた。時がたつのは早いものである。不慮の事故で亡くなって間もなく8年▼自然科学部顧問として生徒とともに駆け回った。天間舘神社(七戸町)にすみ着いたヒナコウモリの移住に成功。国内外の注目を集めた「蝙蝠小舎(こうもりごや)」の技術は、世界遺産・アンコールワットの保護にも活用される▼幻のフクロウとされるコノハズク、外来種が優勢となっているタンポポ。視線はあらゆる生き物に向けられた。在野の研究者が追求し続けたのは人間と生物の共存。後に盛んに謳(うた)われる「多様性」である▼高校の指導者としても、幼稚園の探鳥遠足の講師としても、向山さんは多くの子どもたちを導いた。教え子の有志が近く、恩師の功績を後世に伝える取り組みを始めるという。遺志は受け継がれていく。