東日本大震災の体験学習館「みなっ知」(八戸市湊町)の来館者が5万人を突破した。2011年3月11日の震災から10年近くが経過し、薄れつつある記憶の伝承は大きな課題。この施設を拠点に子どもたちへ「あの日」を語り継ぎ、さまざまな自然災害に備える意識を高める防災教育がさらに広がることを期待する。[br][br] 震災では宮城県石巻市立大川小の児童74人と教職員10人が犠牲になるなど、被害は学校現場にも及んだ。その後の訴訟では、学校を含む行政側に高度な安全確保の義務を認めた判決が確定し、今後の取り組みの指針となった。[br][br] 八戸市内では震災による子どもの犠牲者はいなかったが、多賀小の校庭が津波で浸水。青森県教委などが県内公立学校を対象に実施した調査によると、大地震に伴う津波が発生した場合、浸水被害が想定されるのは39校で、うち八戸市は24校で最多だった。[br][br] みなっ知は館鼻公園に隣接し、07年10月に無人化された旧八戸測候所に整備。市が土地と建物を国から取得して改修し、19年7月に開設した。[br][br] 展示の案内員を配置した県内唯一の震災伝承施設。震災の津波発生から復興までを、映像と音響で表現した「震災タイムトンネル」がメインの展示物としている。[br][br] これらに加え、震災の教訓を生かした防災教育を進めるため、市教委は独自に「防災ノート」を作製。県防災士会八戸支部も学校を巡回して防災教室を開催している。[br][br] これで十分だとは必ずしも言えないだろう。行政側には取り組みの継続とともに、さらなる拡充を求めたい。[br][br] 震災時に6歳だった子どもは既に高校1年生に成長。自らの体験を有事の行動に反映させるとともに、周囲に伝えることもできるはずだ。[br][br] 一方、物心がついて記憶が定かになるのは一般的に小学校低学年の頃とされ、現在の小中学生の多くは震災の記憶がない。このような子どもたちにこそ、いかにして自分の判断で命を守る行動を取るのかを教える必要があろう。[br][br] 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、最近は津軽地方の内陸部の小学校が修学旅行先を県内に変更し、みなっ知で震災を学習するケースが増えているという。[br][br] みなっ知を防災教育の拠点施設とすべく、今以上に内外へ広く情報を発信しながら、積極的な活用を促したい。