天鐘(8月7日)

鼻を表現する際、日本人や中国人などのモンゴロイドは「高いか低い」、欧米系のコーカソイド(白人)は「長いか短い」で判断するという。美容整形も東洋は隆鼻、欧米は高くて長すぎる鼻を低くする施術が主流らしい▼哲学者パスカルの「クレオパトラの鼻がもう.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 鼻を表現する際、日本人や中国人などのモンゴロイドは「高いか低い」、欧米系のコーカソイド(白人)は「長いか短い」で判断するという。美容整形も東洋は隆鼻、欧米は高くて長すぎる鼻を低くする施術が主流らしい▼哲学者パスカルの「クレオパトラの鼻がもう少し低かったら、歴史は変わっていただろう」(『パンセ』)という箴言(しんげん)も、「低い」は意訳で仏語では「短い」だった▼パスカルが言わんとしたのは「歴史は鼻の大小など些細(ささい)な事で変ってしまう」というレトリック。彼女のツンと澄ました美しい鼻にローマの英雄カエサルは魅せられ、ギリシャとローマの歴史が決定的に変わった▼芥川龍之介の短編『鼻』は腸詰めのような長い鼻を持つ高僧の話。外見は頓着しない風を装っていたが、実は皆の嘲笑に自尊心が酷(ひど)く傷ついていた。弟子の治療法を試すと普通の鼻に縮んだが、再び笑いが―▼人が不幸を切り抜けると、また同じ不幸に陥れたくなる。芥川は素材の『今昔物語』に「傍観者の利己主義」という味付けを施し、“他人の不幸は蜜の味”に感じる人間の非情な本質を描出。夏目漱石を唸(うな)らせた▼今日8月7日は「鼻の日」。目は口ほどに物を言うが鼻だって負けてはいない。「鼻が高い」「鼻にかける」「鼻につく」…。顔の真ん中にでんと居座る鼻は如何にも居丈高(いたけだか)。でも今はマスクで隠しておいた方が無難なようだ。