天鐘(10月1日)

今日から10月。朝晩めっきり冷え込むようになり、おでんが恋しい季節である。コンビニで売り出したとのニュースがあった。今年はコロナ対策にも気を遣っているらしい▼おでん、と書いただけで、体も心も温まる心持ちがする。大鍋に集う大根、コンニャク、凍.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 今日から10月。朝晩めっきり冷え込むようになり、おでんが恋しい季節である。コンビニで売り出したとのニュースがあった。今年はコロナ対策にも気を遣っているらしい▼おでん、と書いただけで、体も心も温まる心持ちがする。大鍋に集う大根、コンニャク、凍み豆腐…。ルーツは室町時代という伝統の味。手軽な鍋料理として、その安定感はいつの世も揺るぎない▼今でこそコンビニだが、やはりおでんは屋台が似合う。昔、八戸市庁の前に出ていて、寒い夜によく寄ったものだ。だし汁が染みこんだネタは少々黒ずんではいたが、それがまた良い味を出していた。ファンも多かったと記憶する▼〈職の他の話題あらずやおでん酒〉草間時彦。駆け出しのころ、夜な夜な上司に小さなおでん屋に誘われた。満足に書けない原稿に毎度、雷が落ちる。当方、黙ってちくわをつまむしかなかった▼酔っぱらっての説教は今ならパワハラだ。だが振り返れば、湯気の上がるおでんの前でたたき込まれた記者のイロハは不思議と今でも忘れない。取材の勘所、人付き合いの仕方…。亡き上司の顔が浮かぶ昭和の思い出である▼この春入社、試用を経て今日から正社員の方もいよう。先輩に叱られ、励まされて半年。やっとそれぞれに仕事の味も染みてきたころか。大鍋の中の若き大根やコンニャクたち。これから煮込むほどに、その個性はうま味を増す。