天鐘(8月3日)

梅雨が明ければ、本格的な夏山シーズンがやってくる。四季折々に美しい表情を見せるが、最も明るい輝きを放つのはこの時期。抜けるような高空、活気に満ちた稜線(りょうせん)。頂から雄大な景色を望み、充実感に浸る▼コマクサは孤高の花。砂礫(されき)に.....
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 梅雨が明ければ、本格的な夏山シーズンがやってくる。四季折々に美しい表情を見せるが、最も明るい輝きを放つのはこの時期。抜けるような高空、活気に満ちた稜線(りょうせん)。頂から雄大な景色を望み、充実感に浸る▼コマクサは孤高の花。砂礫(されき)に深く根を張って、わずかな養分を蓄え、可憐(かれん)に咲く。群生地は少なく岩手山などに限られる。気品をまとう淡紅色の「高山植物の女王」。多くの登山愛好家を魅了する貴重種である▼その花言葉は「誇り」「気高い心」、そして「高嶺の花」。生態を知れば納得だ。草花であれば遠くから眺めるだけでも楽しめるが…。あの慣れ親しんだ味は、手が届かない高貴な存在になってしまうのか▼店頭の値札に目を見張った。サンマが1匹6千円弱。先月、北海道での初競りは入荷が200匹足らず。ご祝儀相場もあって史上最高値をたたき出した。銀鱗(ぎんりん)が鎮座する発泡スチロール容器が化粧箱に見えた▼近年は不漁傾向が続く。特に昨年は不振を極め、水揚げが過去最低だった。盛漁期はこれから。だが、今秋も輪をかけて来遊量が少ない予測。コロナ禍での調査は限定的で、不確実性が高いというが▼資源管理も、海洋異変への対応も、鍵は他国との協調にあるのだろう。〈さんま食いたしされどさんまは空を泳ぐ〉。自由律の俳人・橋本夢道が詠んだのは戦後の飢えへの嘆きだった。飽食の時代に天を仰ぐとは。