コラム
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 私権制限や罰則の強化を盛り込んだ新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案が衆院を通過、3日に成立する見通しだ。国会提出された政府案の審議入り前に、自民、立憲民主両党が焦点の罰則を巡り、前科となる刑事罰から行政罰への変更などで修正合意したためだ。[br] 当初の政府案では、入院拒否者に対し「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」の刑事罰を定めていたが、修正で「50万円以下の過料」とした。疫学調査拒否者に対しても、罰金から過料に改められた。[br] 政府は罰則導入の理由について全国知事会の要請を踏まえたとしているが、厚生労働省の専門部会では慎重、反対意見が多かった。感染隠しや検査回避につながる恐れがある上、感染者や医療従事者への差別を助長するとも指摘されており、参院ではより丁寧な議論が必要だ。[br] 野党側は営業時間短縮などに応じた事業者への手厚い補償を求める。改正案は「財政上の措置を講ずる」と規定、自民、立民両党合意では「効果的な」支援を政府に求めた。ただ菅義偉首相は衆院審議で「適切に対応する」と述べただけ。他の野党からは「補償が不十分」との声も出ている。[br] 改正案では、緊急事態宣言の前段階となる「まん延防止等重点措置」が新設される。政府は対象地域や業種を絞った形にし「専門家の意見を聞いて判断する」と強調しているが、発令要件の曖昧さは否定し難い。[br] 野党の要求に応じ、発令する際の国会報告が付帯決議に盛り込まれたが、具体的には政令で定めるとしており、行政の裁量を広げる意図も見え隠れする。[br] 特措法の改正は昨年9月の菅政権発足以前から浮上していたテーマで、同12月には野党側が改正案を国会に提出した。それを緊急事態宣言の再発令中に提案した政府、与党の姿勢は怠慢と言わざるを得ず、急場しのぎの感が否めない。[br] この間、与党幹部ら4人が緊急事態宣言下の深夜に東京・銀座のクラブを訪れていた事実が発覚。夜の外出自粛呼び掛けに反する行動で、自民党の3人は離党し、公明党幹部は議員を辞職したが、国民の権利制限を決める側の姿勢が問われた形だろう。[br] 本来、与野党による法案の修正合意は、国会の在り方として望ましい姿だ。しかし、今回は議論の時間が短く、詰め切れていない部分が多いという印象を受ける。改正案が成立しても、生活に直結する課題だけに不断の見直しを求めたい。