時評(1月19日)

誰に向けてのメッセージだろうか。菅義偉首相にとって初めてとなる施政方針演説が18日、衆参両院で行われた。だが、焦点が絞られていたとは言いがたく、国民に訴える力は弱かったのではないだろうか。 新型コロナウイルス感染症の急拡大に伴い再び発令され.....
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 誰に向けてのメッセージだろうか。菅義偉首相にとって初めてとなる施政方針演説が18日、衆参両院で行われた。だが、焦点が絞られていたとは言いがたく、国民に訴える力は弱かったのではないだろうか。[br][br] 新型コロナウイルス感染症の急拡大に伴い再び発令された緊急事態宣言下という異例の通常国会だ。確かに演説の冒頭にコロナ対策が据えられてはいる。[br][br] 30代以下の感染者増大への懸念が示されてはいるものの、それら若年層をターゲットとした力強い訴えあるいは具体的な注意喚起は見当たらない。飲食が問題とされ、時間短縮に伴う協力金増額への言及はあるが、苦難に直面する飲食業者への心のこもったねぎらいや謝辞は聞こえない。[br][br] 「実務」を重視する首相だけに派手なパフォーマンスは遠ざけたいのかもしれないが、国民に響く肉声は必要だ。「国民の皆さまのご協力をいただく」だけではいかにも説得力がない。[br][br] 日本医師会の中川俊男会長は「強い危機感が(政府から)伝わらない」と指摘しているが、演説もこれまで政府が示した対策をなぞっただけに映る。緊急時の国会だけに、演説の多くをコロナ対策にさくという大胆さがあっても良かった。[br][br] 「政治とカネ」を避けた政治姿勢は問題だ。安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に開いた食事会を巡って、先月末には安倍氏の秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、安倍氏が国会で過去の答弁が誤っていたと謝罪、弁明したばかりだ。[br][br] 今年に入っても吉川貴盛元農相=自民党を離党=が鶏卵生産業者からの資金提供による収賄罪で在宅起訴された。[br][br] いずれも首相が内閣の要である官房長官を務めていた折に起きている。現に自民党総裁である立場からも不祥事を根絶する決意が求められる。夕食会を巡る答弁が事実と異なっていたことを謝罪するだけでは政治不信を払拭(ふっしょく)できない。[br][br] 首相が力点を置くデジタル庁新設、不妊治療への公的保険適用やグリーン社会の実現をはじめとする数々の政策課題についても、項目が羅列されたという印象しか残らない。[br][br] 地域に生きる人々のエピソードなどを演説に織り込むことは安倍前首相が用いた手法だったが、国民に政治を身近に感じさせる狙いは感じられた。同様の工夫が望まれるのではないか。[br][br] 今後の国会論戦では、熱意や緊張感が伝わる答弁で国民との距離を縮めてほしい。