天鐘(2月2日)

古来、人間は訳が分からない魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界には「鬼」がいて、その鬼をやっつければ呪縛から解放されると考えた。今日は節分。「鬼はー外!」と追い払うべきターゲットは誰しも一緒。今年は力が入りそうだ▼中国の秦代、疾病や災害を鬼に見.....
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 古来、人間は訳が分からない魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界には「鬼」がいて、その鬼をやっつければ呪縛から解放されると考えた。今日は節分。「鬼はー外!」と追い払うべきターゲットは誰しも一緒。今年は力が入りそうだ▼中国の秦代、疾病や災害を鬼に見立て、桃の木の弓と葦(あし)の矢で追い払う「追儺(ついな)」の儀式。これが日本に導入され、奈良時代に「鬼遣(や)らい」の宮中行事として定着した▼周、漢の古代から明に至るまで、中国の王朝崩壊の遠因に天然痘など疫病の蔓延が挙げられる(石平著『裏読み三国志』)。天然痘は朝鮮半島を経て平城京にもたらされ、疫病退散を願い奈良の大仏も建立された▼弓矢が豆まきに変わるのは室町時代。鬼の目を潰(つぶ)す「魔目(まめ)を射(い)る」から炒(い)り豆を鬼に投げつけた。柊(ひいらぎ)と焼き鰯(いわし)の骨を門口に挿す「柊鰯」も平安時代からの風習。こんな庶民の抵抗も鬼達は柳に風と受け流した▼節分は例年3日だが地球公転周期が閏(うるう)年で修正しても余り、今年は124年ぶりに1日早まった。奇しくも前回1897(明治30)年にもペストや赤痢の疫病が大流行。豆まきも虚しく鬼は残虐さを増していった▼だが、そこにペスト防疫の北里柴三郎、野口英世、緒方正規、赤痢菌発見の志賀潔ら救世主が登場。鬼の正体を暴き、感染を抑えて退散させた。コロナワクチン接種までもう少し。後はその武器をどう使うか―指導者の采配が問われる。