天鐘(1月24日)

身を切るような寒さと忍び寄るコロナを避けて巣籠(ご)もりしていたら、束の間淡い日差しが戻ってきた。軒先の氷柱(つらら)が冬日を浴びて煌(きら)めいている。〈水晶に朝日かゝやぐ氷柱哉 子規〉▼瀑布(ばくふ)が結氷して「氷瀑」と化すのは寒さゆえ.....
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 身を切るような寒さと忍び寄るコロナを避けて巣籠(ご)もりしていたら、束の間淡い日差しが戻ってきた。軒先の氷柱(つらら)が冬日を浴びて煌(きら)めいている。〈水晶に朝日かゝやぐ氷柱哉 子規〉▼瀑布(ばくふ)が結氷して「氷瀑」と化すのは寒さゆえ。飛沫(ひまつ)が凍ってどんどん太り、氷瀑の奥から滝の音だけがする。一方、軒先の「氷柱」の方は積もった雪が一旦解け、ぽたぽたとしたたる滴が凍って氷柱が伸びる▼〈雫(しずく)とも見えて氷柱でありしかな 稲畑汀子〉の句を見付けた。氷柱とも水滴とも見分けが付かない小さな一粒の輝き。自然がつくり出す絶妙な造形美である。春はそんなところから半歩ずつ近づいているようだ▼子供の頃、軒の氷柱を折れないようにもぎ取って長さを競った。喉が渇けば舐(な)めた。昔は格好の遊び道具だったが、今は二階建てやマンションで軒が高くなり、氷柱は“落下注意”の危険物になってしまった▼呼称は青森県南では「スガ(シガ)」「スガマ」「シガマッコ」「スガコ」、岩手県北では「タルヒ(垂氷(たるひ))」や「タロヒ」。埼玉県は「タッペ」、新潟県「ダラリ」、千葉県「チャラリン」など枚挙に暇がない▼氷柱を巡る方言語彙(ごい)数は都道府県を上回る。昔、氷柱は子供達の興味の対象だった(金田一春彦著『ことばの歳時記』)と説明しても、今は通じないだろう。「スガオロシ」と言えばむしろ“菅降ろし”に聞こえるかも…。