安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し「桜を見る会」前日の夕食会費用補塡(ほてん)問題での事実と異なる答弁を訂正、「国民、全ての国会議員に深くおわびする」と陳謝した。[br][br] 夕食会の会計処理や運営は秘書任せで、補塡の事実は知らなかったとの発言を、24日の記者会見に続いて繰り返した。[br][br] 安倍氏は、5年間で900万円余りに上る多額の支払いの事実は知らなかったとしたが、説得力を欠いた。夕食会の明細書や領収書の存在を巡って国会で追及を受け、事実を確認・修正する機会が何度もあったにもかかわらず、虚偽答弁を続けていた理由も判然としなかった。[br][br] これでは幕引きは許されない。さらに踏み込んだ事実解明が必要だ。国会は傷つけられた名誉を回復するため、与野党の枠を超えて努力し、国民の期待に応える責任がある。[br][br] 憲法の定める議院内閣制の下で、国会は国権の最高機関であり、行政府の長である首相が立法府に対して虚偽答弁を行っていては、議会制民主主義は成り立たない。[br][br] 安倍氏は国民の支持を得て史上最長の在任日数を記録した。にもかかわらず、政治資金規正法と公選法違反の疑いで告発され、東京地検特捜部の事情聴取を受けた。国民の失望を招き、政治への信頼を損なった責任は極めて大きい。[br][br] 野党からの議員辞職要求を安倍氏は拒否したが、説明責任を十分に果たさないままでは、国会議員であり続ける資格があるのかとの疑念を拭えない。潔い出処進退の判断を望みたい。[br][br] 安倍氏は補塡自体に問題はなく、記載していれば済んだとの認識を改めて表明した。しかし、野党が指摘した1人当たり約3千円の補塡は、法律違反の利益供与に当たる可能性もある。「政治とカネ」に関する安倍氏の問題意識は、不十分だと指摘せざるを得ない。[br][br] 国会による事実解明のために、うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問が必要だ。自民、公明両与党が野党の喚問要求を拒み続ければ、来秋までに必ず実施される総選挙で有権者から厳しい審判を受けるだろう。[br][br] 桜を見る会問題は、権力乱用による公的行事の私物化や招待者名簿の不自然な廃棄、巨額詐欺事件への悪用など多くの疑惑をはらんでいる。[br][br] 菅義偉首相も、官房長官として虚偽答弁の上塗りを重ねてきた責任は免れない。森友、加計問題も含め、安倍政権の疑惑を巡る再調査の実施に指導力を発揮すべきだ。