時評(1月25日)

17日に投開票が行われた大間町長選は、町政刷新を掲げ、2017年の前回に続いて出馬した元町参事の新人野﨑尚文氏(65)が、5期目を目指した現職金澤満春氏(70)を接戦で下し、初当選を果たした。野﨑氏には「暗く沈む町を変える」と選挙戦で訴えた.....
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 17日に投開票が行われた大間町長選は、町政刷新を掲げ、2017年の前回に続いて出馬した元町参事の新人野﨑尚文氏(65)が、5期目を目指した現職金澤満春氏(70)を接戦で下し、初当選を果たした。野﨑氏には「暗く沈む町を変える」と選挙戦で訴えたように、明るさを実感できるまちづくりで町民の負託に応えてほしい。[br] 選挙戦は4期16年にわたる金澤町政の評価が争点となったが、両氏の公約は第1次産業や観光振興、大間原発の早期稼働などが柱で、大きな差異はなかった。勝敗を分けた要因として、計画通りに進まない原発工事や、町の代名詞であるクロマグロの漁獲規制など、長引く町経済の閉塞感との関係性は否定できない。[br] 原発は原子力規制委員会の審査、漁獲規制は国際的な取り決めと、町単独でどうにかできるものではない。そこに新型コロナウイルスが追い打ちを掛けた。マグロ漁師は自由に操業できないことに加えて魚価低迷にあえぎ、飲食店は観光客激減で窮地に立たされた。不織布マスクの全戸配布や経済対策など、金澤氏のコロナ対策が他自治体と比べて遅いと不満を示す町民もおり、多選の金澤氏に逆風になった可能性もある。[br] 野﨑町政も取り巻く環境が変わらない中での船出となる。町が財政基盤と経済活性化の起爆剤に据える原発は審査終了が見通せない。規制委への申請から6年たった今も地震・津波の審議にとどまり、本体プラントの審議に入れていない。建設と運転差し止めを求める函館市との訴訟や住民訴訟も審理が続いている。マグロの漁獲枠拡大も厳しく、コロナも収束の兆しはないが、町民は町の閉塞感が少しでも払拭されるよう、野﨑氏の手腕に期待している。[br] 野﨑氏は優先する公約として財政健全化と学校給食実現を挙げる。給食は前回から訴える公約だが、町の出生数は近年20人前後で推移する。保護者にとっては助かるだろうが、少子化が進む中、その必要性に関しては議論の余地があろう。[br] 給食センターは建設できても維持費がかかる。食物アレルギーへの対応も必要になる。高齢者世帯などへの配食も視野に入れると言うが、時間と人手も課題になり、かえって財政に悪影響が及ぶことはなかろうか。保護者の弁当作りの負担を減らしたいのであれば、総菜購入費を独自に補助する方策もある。保護者を含めて町民にアンケートを実施し、まずはニーズを把握した上で検討してほしい。