時評(12月15日)

75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で、政府は窓口での自己負担を1割から2割へ引き上げる対象者を「単身世帯の年金収入で200万円以上」と決め、全世代型社会保障検討会議の最終報告に盛り込んだ。 少子高齢化が進む中で医療費を支援する現役世代の.....
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 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度で、政府は窓口での自己負担を1割から2割へ引き上げる対象者を「単身世帯の年金収入で200万円以上」と決め、全世代型社会保障検討会議の最終報告に盛り込んだ。[br][br] 少子高齢化が進む中で医療費を支援する現役世代の負担を軽減するためだが、負担増になる高齢者への影響が心配だ。受診を控えるような事態を招かないよう丁寧な検証が欠かせない。[br][br] 制度の対象者は約1815万人いる。医療費の窓口負担は原則1割で、現役並みの所得がある約130万人だけが3割だ。このうち1割から2割に負担が増えるのは約370万人。夫婦世帯では「年金収入320万円以上」が目安になる。[br][br] 75歳以上の医療費は窓口負担を除いた半分を税金、4割を現役世代が加入する健保組合などの支援金で賄う仕組みだ。団塊の世代が75歳になり始める2022年から医療費は急増し、支援金もいまの6兆8千億円から25年度には8兆2千億円に膨らむと推計されている。[br][br] このため、現役世代の負担が重くならないよう、一定以上の所得がある人の負担を1割から2割に引き上げることは昨年末に決まっていたが、どこで線引きするかの調整は難航した。[br][br] 政府は広く約520万人が対象になる「単身世帯で年金収入170万円以上」としたのに対し、公明党は約200万人と限定的な「年金収入240万円以上」を譲らず、最終的には両者の間をとる形で決着した。[br][br] だが、難航した原因は来年の衆院選など選挙への思惑だというからなんとも残念である。実施時期も当初予定より先送りされ、次の参院選後の22年10月以降になった。[br][br] 高齢者にも応分の負担を求める一方で、加齢とともに医療費がかかるのもやむを得ない。それを踏まえつつ現役世代の暮らしにも目を配ってどうバランスをとるか。そうした議論が深まったとは言いがたい。[br][br] 政府は対象者の負担が急激に増えないように実施から3年間は激変緩和措置をとるというが、医療費のほかに介護費がかかっている人も多い。医療と介護の自己負担の合計に上限を設けている合算療養費なども総合的に見直す必要がある。[br][br] ただ、膨れあがる医療費に対して、保険料の引き上げや窓口負担増でつじつまを合わせる従来のやり方の繰り返しでは、将来不安は募るばかりだ。これまで以上に税金を投入するなど抜本的な改革に踏み出す段階にきているのではないか。