時評(1月29日)

衆参両院の予算委員会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止などを柱とする2020年度第3次補正予算を巡る質疑を終えた。 立憲民主党など野党は、緊急事態宣言の再発令や観光支援事業「Go To トラベル」の停止判断の遅れなど後手に回った対応への反.....
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 衆参両院の予算委員会は、新型コロナウイルスの感染拡大防止などを柱とする2020年度第3次補正予算を巡る質疑を終えた。[br][br] 立憲民主党など野党は、緊急事態宣言の再発令や観光支援事業「Go To トラベル」の停止判断の遅れなど後手に回った対応への反省を求めた。菅義偉首相は「判断は適切だった」と失政を認めず、論戦がすれ違いに終わったのは残念だ。[br][br] 首相が官僚の用意したメモを読み上げたり、担当閣僚に任せようとしたりする場面が目立った。多用してきた「お答えは差し控える」との答弁は封じたものの、結論だけを簡潔に述べ過ぎるとの批判を浴びた。初の施政方針演説で打ち出した「感染収束の最優先」の決意が、国民に十分には届かなかった。[br][br] 予算委審議のさなかに自民、公明両党幹部が、緊急事態宣言の再発令中の深夜に東京・銀座のクラブ通いをしていた事実も判明した。菅首相は陳謝したが、感染防止に懸ける首相の熱意が足元の与党議員にさえ徹底していない何よりの証左だろう。[br][br] 総額19兆円余りの第3次補正予算は、緊急事態宣言の再発令を想定していない。野党はトラベル事業の1兆円超の延長経費などを削除する組み替えを要求したが、菅首相は拒否した。信条に掲げる「あしき前例主義の打破」を生かして組み替えに応じていれば、首相の決意を象徴するシンボルとなり、国民の心にも響いたのではないか。[br][br] 「政治とカネ」を巡る質疑でも、菅首相は従来通りの答弁を繰り返すにとどまった。コロナ対策が実効を上げるには国民の理解と協力が欠かせず、その前提となるのは政治への信頼回復だ。首相はその先頭に立つ責務を自覚すべきだ。[br][br] 最近の各種世論調査に示された政府のコロナ対応への批判の高まりは、菅首相の発信力不足と、反省の態度を表そうとしないかたくなな姿勢が背景にあると指摘せざるを得ない。[br][br] 今後の焦点は、新型コロナ特別措置法と感染症法の改正や緊急事態宣言の延長、ワクチン集団接種の実施に移った。[br][br] 菅首相は28日未明にバイデン米大統領と初の電話会談を行い、日米同盟の強化とコロナ対策での緊密な協力で一致した。コロナ対策での国際協調を進める上で、日本の役割が重要になってくる。[br][br] 国内外に向けて丁寧で分かりやすい発信に努めるとともに、謙虚に批判を受け止めて柔軟に取り入れていく姿勢に転換するよう首相に求めたい。