天鐘(1月25日)

作家の池澤夏樹さんはある著書で「火」についての興味深い説を紹介している。動物の中で唯一、人間が火を扱えるのは、火と人間のサイズが絶妙のバランスにあるからだという▼例えば、人がネズミほどなら、身の丈に合う火は極小で、すぐ消える。逆にゾウくらい.....
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 作家の池澤夏樹さんはある著書で「火」についての興味深い説を紹介している。動物の中で唯一、人間が火を扱えるのは、火と人間のサイズが絶妙のバランスにあるからだという▼例えば、人がネズミほどなら、身の丈に合う火は極小で、すぐ消える。逆にゾウくらい大きければ、燃やせる場所が限られる。うまく火をコントロールするのに、人間のサイズは最適だったというわけだ▼とはいえ、その火は時に人の制御を超えて暴走する。先週、むつ市や平内町などで火災が続発、合わせて5人が犠牲になった。厳しい寒さの中での消火作業が紙面に載った。暴れる火の威力をまざまざと見せつけられる▼切なく思い出す冬の火事がある。5年前の新潟県糸魚川大火。中華料理店のコンロの火が、約150棟を焼いた。自責の念から、火元の店主は新聞に謝罪文を挟んだ。痛感する“マッチ1本”の怖さである▼空気が乾燥する季節を迎えた。毎年のことながら、青森県の住宅火災の主な原因にストーブ、コンロ、たばこが挙がる。ちょっとした不注意が命取りになる。加えて今年はコロナの巣ごもり。一層の目配りが必要だ▼乾いた冬の空気は、より遠くの音を運んでくる。真夜中の消防車や救急車のサイレンには、ことさら胸騒ぎを覚える。火は手の中のものとばかり思っていたが、気がつけば…。そんなことにならぬよう、くれぐれも油断なく。