時評(1月17日)

ツイッターやフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)は、情報の発信にも収集にも非常に便利だ。本社も有効に活用し、新型コロナウイルスの感染状況や重大ニュースなどは、事実確認ができた時点で速報を流している。 SNSの利点は速報性と拡散性に.....
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 ツイッターやフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)は、情報の発信にも収集にも非常に便利だ。本社も有効に活用し、新型コロナウイルスの感染状況や重大ニュースなどは、事実確認ができた時点で速報を流している。[br] SNSの利点は速報性と拡散性にある。ツイッターの場合、誰かの言葉に共感し、もっと知ってもらいたいと思えば、「いいね」や「リツイート」で反応することができる。[br] SNS上で話題になることを「バズる」と言う。元日の本紙新年号に掲載された「妄想八戸市営地下鉄」の記事がまさにバズり、紙面の画像を添付した読者の投稿、本社文化部アカウントのつぶやきに多くの反応があった。複数のインターネットメディアで記事にもなった。[br] 記者の妄想を楽しんでいるうちはいいが、注意しなくてはならないのは、SNSは真偽定かならぬ情報が氾濫する場であり、利用者に適切な取捨選択が求められるということだ。[br] 現在進行形でデマがまん延しているのが、米大統領選を巡る問題。日本人の中にもトランプ大統領が主張する「選挙は盗まれた」説をかたくなに信じ、大統領の写真を自身のアイコンに設定する応援者までいる。[br] 新聞やテレビにだまされるなと声高に訴え、SNS上で流れる出どころ不明な情報に飛び付く。選挙の不正は陰謀によって握りつぶされ、非難されるべき議事堂での暴動も、トランプ支持者に紛れ込んだ反対派があおったと信じ込んでいる。正義のトランプ氏が、何らかの巨悪と戦っているのだという。[br] 「反日勢力の陰謀」「政権の陰謀」といった安易な思考に警鐘を鳴らす、歴史学者の呉座勇一氏は「『教科書の記述を盲信する一般人と違って、私は歴史の真実を知っている』という自尊心を与えてくれる」(『陰謀の日本中世史』KADOKAWA)のが、陰謀論の人気の理由だと指摘する。“マスコミが報じない真実”を入手した人々もこれに当てはまるだろう。[br] 一人一人が意識して確度の低い情報を受け入れないことが大切だが、陰謀論人気に乗じたようなサイトや動画も次々に生まれ、この深刻な事態は一朝一夕には変わりそうにない。[br] 特に子どもに対しては、ネット上にあふれる情報を正しく理解して取り入れる力を育む「ネットリテラシー教育」の推進が不可欠だ。表現の自由との兼ね合いもあるが、デマ・誹謗(ひぼう)中傷に対する規制の在り方について議論していく必要もあろう。