時評(12月25日)

政府は来年4月から介護事業所に支払われる介護報酬を0・7%引き上げると決めた。3年に1度の改定で前回に続くプラス改定ではあるものの、新型コロナウイルスの感染拡大で疲弊している中では力不足と言わざるを得ない。 消毒の徹底や送迎の分散化など感染.....
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 政府は来年4月から介護事業所に支払われる介護報酬を0・7%引き上げると決めた。3年に1度の改定で前回に続くプラス改定ではあるものの、新型コロナウイルスの感染拡大で疲弊している中では力不足と言わざるを得ない。[br][br] 消毒の徹底や送迎の分散化など感染予防に細心の注意を払う介護現場では、経営の悪化と人手不足に拍車がかかっているのが現状だ。 厚生労働省の調査では、利用控えや感染対策の費用が経営を圧迫し、収支が感染拡大前より「悪くなった」とした事業所は5月時点で約5割、10月時点でも約3割に上っている。[br][br] 通所介護(デイサービス)や通所リハビリ(デイケア)、短期入所(ショートステイ)などの落ち込みが著しい。サービス全体の昨年度の利益率はここ数年で最低だった。本年度はさらに悪化するのは間違いない。[br][br] 倒産も増えている。民間の信用調査会社によると、今年は今月初めまでで112件と過去最多。自主的な休業や廃業も10月までで400件を超えた。[br][br] そんな状況にもかかわらず、報酬の引き上げ幅のうち0・05%はコロナ対策費用として来年9月までの暫定的な上乗せだというから驚く。経営を立て直すには半年程度ではとても追いつかない。コロナに関係なく続けるべきだ。[br][br] 深刻な人手不足への対応としても物足りない。介護職の有効求人倍率は全職種平均の3倍前後で高止まりしている。重労働の割に賃金が安いからだ。全産業と比べ月約8万5千円低い。これでその差を少しでも縮めることができるだろうか。[br][br] 特に切迫しているのはホームヘルパーだ。求人をかけても応募が全くない上、コロナ禍で退職する人も相次いでいる。60歳以上が4割を占めることから、自身が感染する恐怖や利用者へ感染を広げないかという不安からだという。対策を急がなければならない。[br][br] ただ、報酬を引き上げれば保険料や利用者負担の増加に跳ね返る。どちらももう限界に達しているだけにどうバランスをとるかは難題だ。いまは財源の半分を税金で賄っているが、この割合をもっと増やすなど抜本的な見直しが求められる。[br][br] 団塊世代が全員75歳以上になる2025年には、需要拡大で介護職は約34万人も不足すると予測されている。賃上げや最新技術を活用した省力化など処遇改善は待ったなしだ。そのための原資を確保できなければ制度の持続可能性もおぼつかない。