時評(12月23日)

菅義偉首相は国民にわかりやすく説明しようと努力しているだろうか。 新型コロナウイルス感染症第3波の拡大への対応にとどまらず、首相自身のあるいは政権の政治姿勢が問われる局面でも発信はわずかだ。首相官邸で開かれた記者会見は9月16日の就任時と事.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 菅義偉首相は国民にわかりやすく説明しようと努力しているだろうか。 新型コロナウイルス感染症第3波の拡大への対応にとどまらず、首相自身のあるいは政権の政治姿勢が問われる局面でも発信はわずかだ。首相官邸で開かれた記者会見は9月16日の就任時と事実上臨時国会が閉幕した12月4日の2回にとどまる。[br] 国民の不安、不信が内閣支持率の急落に表れている。感染拡大を防ぐため国民の協力を求め一定の安心感を与えるのが使命ではないか。丁寧に正確に国民に語りかけるべきだ。[br] 首相は14日、「Go To トラベル」の年末年始一時停止を表明した。政府の対策分科会がそれまでに、拡大が継続する地域内では外出自粛や「Go To トラベル」の一時停止を求める提言をまとめていたにもかかわらず、首相は直前まで「まだそこ(一時停止)は考えていない」と否定していた。方針転換はいかにも唐突だった。[br] 意を尽くした説明が求められたが、首相は官邸を退出する際に、短時間の記者団インタビューに応じただけ。しかも同夜、ホテルの宴会場で経営者ら15人前後と懇談した後、自民党の二階俊博幹事長らと8人程度で会食を楽しんだ。11月には自らが「マスクを着用した上での4人以下での会食」を呼びかけていた首相の行動としてはあまりにも無自覚、無責任だ。[br] 説明の欠如は日本学術会議の会員任命問題でも明らかだ。学術会議側が拒否理由を明らかにするよう求めているにもかかわらず、首相は公務員の人事であることなどを盾に拒否し続けている。説明責任を果たしていないだけでなく、国を代表する学術団体に対してあまりに非礼ではないか。[br] 前政権時代のことではあるが、安倍晋三前首相の後援会による「桜を見る会」前日の夕食会を巡る疑惑も説明責任の問題だ。安倍氏は首相時代の国会答弁などで疑惑を否定し続けていたが、検察の事情聴取を受け、捜査の終結後、国会招致に応じる意向を示している。[br] 菅氏は官房長官時代に安倍氏の答弁を追認していたことについて、首相就任後「事実が違った場合は当然、私にも責任がある」と述べている。前政権の対応は菅内閣の正統性を疑わせることにもなりかねない。[br] 鶏卵生産業者からの現金受領疑惑の渦中にある吉川貴盛元農相の議員辞職により、政権が今後「政治とカネ」問題で追及される可能性がある。難局でこそ説明責任が問われる。