天鐘(12月19日)

子供のころ、部屋を散らかしていると「早くとりけろ」と親に叱られた。「とりける」とは片付けるという意味の方言。だから雪を片付ける「雪かき」は「雪とりけ」と呼んだ▼調べてみると、雪かきを意味する全国のお国言葉は多彩だ。「雪はね」は学生時代、北海.....
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 子供のころ、部屋を散らかしていると「早くとりけろ」と親に叱られた。「とりける」とは片付けるという意味の方言。だから雪を片付ける「雪かき」は「雪とりけ」と呼んだ▼調べてみると、雪かきを意味する全国のお国言葉は多彩だ。「雪はね」は学生時代、北海道の先輩から教わった。秋田では「雪寄せ」、石川や富山の一部では「雪すかし」「雪どかし」などと言うらしい▼中でも、新潟県上越地方の「雪ほり」には実感がこもる。全国屈指の豪雪地帯。はねたり、寄せたりでは間に合わず、日々掘らねばならなかったのだろう。厳しい寒さの中で雪と格闘してきた人々の暮らしがしのばれる▼その新潟など、関東から北陸をドカ雪が襲った。背丈ほどの積雪に、さすがの地元も大慌てだ。掘ろうが、はねようが、その先から降り続く。記録的な少雪だった昨年との帳尻合わせかと思えるほどだ▼高速道で立ち往生した車は一時、2千台を超えた。狭い個室で先の見えない時を過ごす不安はいかばかりだろう。一歩間違えれば命にも関わってくる事態。思い知るのは、人の力では太刀打ちできない自然の怖さだ▼結晶の形で上空の様子が分かることから、降る雪を「天からの手紙」と表現したのは中谷宇吉郎。ロマンチックだが度を超せば白い悪魔と化す。近ごろ天は気まぐれだ。何とか「とりける」ぐらいで終わってほしい今年の冬である。