時評(12月13日)

風間浦村が下風呂温泉郷に建設していた下風呂温泉「海峡の湯」が今月オープンした。三つの泉質が楽しめる天然温泉施設は、村民の憩いの場であり、宿泊客や観光客減少が続く温泉郷のにぎわい創出拠点。多くの利用を期待したい。 室町時代には刀傷などに卓効の.....
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 風間浦村が下風呂温泉郷に建設していた下風呂温泉「海峡の湯」が今月オープンした。三つの泉質が楽しめる天然温泉施設は、村民の憩いの場であり、宿泊客や観光客減少が続く温泉郷のにぎわい創出拠点。多くの利用を期待したい。[br][br] 室町時代には刀傷などに卓効のある湯治場として知られていた下風呂。江戸時代には南部藩3代藩主・南部重信が入湯し、その後は藩が湯守を置いて管理するなど重宝された。[br][br] 魅力は直径約300メートルの狭いエリアでありながら、大湯系、新湯系、浜湯系と三つの源泉があることだ。全国的に珍しく、含硫黄で海に近い場所にあるのも貴重だという。海峡の湯のオープンを機に価値を再認識し、情報発信の強化に努めたい。[br][br] 海峡の湯は、公衆浴場として100年以上営業し、11月末で閉館した「大湯」と「新湯」の源泉を集約した施設だ。近くに別々に立地していたが、築50年以上と老朽化が進んでいたことから、新施設を建設することになった。閉館が決まると青森県内外から入浴客が惜別に訪れ、10月以降は普段の3倍の人が訪れた日もあったという。[br][br] 温泉郷の宿泊客は1993年がピークで約14万4千人いたが、2016年には約2万人に落ち込んだ。バブル崩壊やライフスタイルの変化によって団体旅行が減少し、宿泊施設の廃業が続いた。[br][br] 今年は新型コロナウイルスが暗い影を落とす。一方で公衆浴場の閉館が話題になり、入浴客が全国から訪れたのは、多くのファンがいることの証左と言える。こうした人たちに繰り返し訪れてもらう仕掛けが必要であろう。[br][br] 観光客の動線も変わる。海峡の湯に訪れた人に、どう温泉郷内を楽しんでもらい、波及効果を行き渡らせるかが重要だ。昨年廃止になった湯巡りに代わる街歩き企画など、官民挙げてアイデアを出し合ってほしい。[br][br] 両公衆浴場の跡地利用も地元住民の声を聞いて慎重に議論したい。観光客の中には昔ながらの風情を評価する人が多い。解体せずに利活用できれば観光コンテンツになり得る。[br][br] 海峡の湯は、村ゆかりの作家の井上靖氏や水上勉氏の関連品を紹介するコーナーを設けた。これまではなかったが、両作家の文学に触れるイベントを開催しても面白いのではないか。[br][br] オープンの話題性で当面はにぎわうだろうが、真価が問われるのはそれ以降だ。下風呂のファンを増やし、リピーターにする契機にしたい。