時評(12月22日)

2021年度の政府予算案はコロナ対策費、社会保障費、防衛費などが積み増され、一般会計総額が106兆円6097億円と9年連続で過去最大となった。 財源となる税収はコロナ禍による企業業績の悪化などから法人税が大幅に落ち込むため、20年度当初予算.....
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 2021年度の政府予算案はコロナ対策費、社会保障費、防衛費などが積み増され、一般会計総額が106兆円6097億円と9年連続で過去最大となった。[br] 財源となる税収はコロナ禍による企業業績の悪化などから法人税が大幅に落ち込むため、20年度当初予算比で6兆円減少する。不足分を補うため約43兆円の国債を新規に発行するが、歳出が国債に依存する割合は40・9%になり、前年度当初予算より9・2ポイント悪化して財政再建の道はさらに遠のく。[br] 最大の支出項目の社会保障費は、35兆8千億円台にまで増える。高齢者の医療費を減らそうと、75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる制度変更が収入制限を付けて決まったが、社会保障全体の制度をそのままにしておくと自然増がかさんでくる。来年度以降、年金などの制度変更も迫られる。[br] 防衛費は過去最大を更新し、政府が断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」計画の代替策としてイージス艦2隻を導入するための調査研究費を盛り込んだ。ミサイル防衛の有効性について十分な議論が行われておらず、時期尚早と言わざるを得ない。[br] デジタル対策や脱炭素化に向けての取り組みなどで、これまでの各省庁の縦割り予算とは異なるテーマを定めての予算編成が行われた。菅義偉首相の強い意向が反映されたこの手法は評価する。マイナンバーカードと運転免許証の一体運用などの実現に向けて国民の期待感が高まっているだけに、明確な成果を出してほしい。[br] 今回の予算編成では、要求省庁に関係するいわゆる族議員が増額要求を次々と突き付けたのに対して、財務省はほとんど抵抗できなかった。コロナ感染対策という緊急課題のためにはある程度はやむを得なかったとしても、無理な要求は厳しく査定すべきである。当初予算だけでなく、20年度がそうだったように大幅な赤字国債の追加発行につながりやすい補正予算についても、監視が必要だ。[br] 政府は25年度までに、政策経費を税収など借金以外の財源で賄えるかどうかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指しているが、21年度予算を見る限り目標は風前のともしびだ。財政再建についての関心が薄れてきている証拠ともいえる。今年のような「国難」で予算が一時的に膨張するのはやむを得ないが、財政再建の信念を忘れてしまっては財務省の存在意義がなくなる。