時評(1月26日)

核兵器の開発、保有、使用などを全面的に禁じる核兵器禁止条約が22日、発効した。条約は2017年、国連で122カ国・地域が賛成して採択され、昨年10月までに発効に必要な50カ国・地域が批准していた。 これまで核実験の禁止や核の拡散防止を定める.....
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 核兵器の開発、保有、使用などを全面的に禁じる核兵器禁止条約が22日、発効した。条約は2017年、国連で122カ国・地域が賛成して採択され、昨年10月までに発効に必要な50カ国・地域が批准していた。[br] これまで核実験の禁止や核の拡散防止を定める条約はあったが、核兵器の存在自体を違法として全面的に禁止する国際法の発効は史上初。グテレス国連事務総長は「核兵器のない世界という目標の実現に向けた重要な一歩だ」と歓迎した。[br] 条約は、核保有国に軍縮を迫る強い圧力になり得るものだ。発効を歓迎するとともに、今後さらに批准国を増加させて国際世論を高め、核軍縮にはずみをつけることを期待したい。[br] 批准国には中南米やアフリカなどの非核保有国が多い。一方で米国、ロシア、中国、英国、フランスの五大核保有国やインド、パキスタンなどの核保有国、さらに日本など米国の「核の傘」に依存する国は条約に参加していない。核保有国に条約順守の義務はなく、フランス外務省は声明で「国際安全保障の文脈に不適合な条約だ。いかなる核兵器の除去ももたらさず核拡散防止条約(NPT)を弱体化させる」と条約発効を批判した。[br] NPTは米ロなど5カ国の核保有だけを認め、その他の国への核開発・保有の拡散を禁止しているが、同時に5カ国に誠実な核軍縮交渉を義務付けている。だが、米国のトランプ前政権とロシアの関係悪化で米ロの中距離核戦力(INF)廃棄条約は失効し、包括的核実験禁止条約(CTBT)も米国などの反対で発効の目途はたっていない。[br] 核軍縮は停滞し、逆に米ロが中心となり小型核の開発など核兵器の近代化を進め、核軍拡にまい進しており、世界の核の脅威は強まっている。核廃絶への道は依然険しいが、就任したバイデン米大統領は、オバマ元大統領が掲げた「核なき世界」の追求を引き継ぐ決意を表明している。核軍縮の進展へと情勢を転換させる米国の指導力を期待する声も強まっている。[br] また広島、長崎の被爆者らは、日本政府に米国の核抑止力を重視した核への依存から転換し、条約の批准に加わることを強く求めている。[br] 条約は、発効から1年以内に開かれる締約国会議へのオブザーバー参加を認めている。唯一の戦争被爆国である日本の政府は、世界に高まる核兵器廃絶を求める声に真摯(しんし)に耳を傾けるべき時だ。オブザーバーとして参加することで、その一歩を踏み出してほしい。