天鐘(12月22日)

来年の年賀状の準備に慌ただしくなるころは、喪中はがきが舞い込む時期でもある。遠くの人の思わぬ「お知らせ」と年賀欠礼の詫(わ)びが、ひっそりと郵便受けにあったりする▼古い友人から一枚が届いた。母上を亡くされたことに加えて、「皆様はよいお年をお.....
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 来年の年賀状の準備に慌ただしくなるころは、喪中はがきが舞い込む時期でもある。遠くの人の思わぬ「お知らせ」と年賀欠礼の詫(わ)びが、ひっそりと郵便受けにあったりする▼古い友人から一枚が届いた。母上を亡くされたことに加えて、「皆様はよいお年をお迎えください」とある。いつもくれるのは写真入りの楽しい年賀状。陽気な彼には似合わない、事務的な文面が切なかった▼今年、喪中のはがきを投函(とうかん)した人たちに思いが至る。感染症に多くのことを阻まれた。内輪だけで済ますしかなかった通夜や葬儀。弔問に訪れた人たちに、十分にお礼を言えなかったことも本意ではなかったろう▼直接、コロナで亡くなった方々の家族は、なおつらい。最期のお別れに立ち会えず、声をかけてやることすらかなわなかった。こぼれた無念の涙はどれほどあったか。ウイルスさえなかったら…の思いが募る▼今年ほど、人との「距離」を考えた年はない。大切に思う人とほど、離れなければならないこともあった。里帰りを我慢し、旅行を辛抱し、飲み会を断った。そして迎える年末年始に、なおコロナは猛威を振るう▼この暮れ、年賀状を書く人がいつもより多いと聞く。会えない肉親や友を思って、筆を執る人もいるのだろう。今だからこそ確かめたい絆やつながりがある。本年もよろしく。おなじみの一言でも、今回は特別なぬくもりがこもる。