時評(1月28日)

厳冬期のロシア全土で大規模な反政府デモが起き、プーチン政権への怒りと不満を爆発させた。 デモはドイツから帰国直後に逮捕された反体制派ナワリヌイ氏が呼び掛けたもので、首都モスクワなど100都市以上で市民が街頭に繰り出し同氏の釈放を要求。重装備.....
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 厳冬期のロシア全土で大規模な反政府デモが起き、プーチン政権への怒りと不満を爆発させた。[br][br] デモはドイツから帰国直後に逮捕された反体制派ナワリヌイ氏が呼び掛けたもので、首都モスクワなど100都市以上で市民が街頭に繰り出し同氏の釈放を要求。重装備の治安部隊に多数が拘束される事態となった。[br][br] 厳戒態勢にもかかわらずこれだけの市民が公然と体制批判の声を上げたのは近年なかったことで、「安定」を誇示してきた当局に衝撃を与えた。高官の汚職追及で知られるナワリヌイ氏は逮捕直後に自らの調査チームを通じ、黒海沿岸にできた「プーチン宮殿」とされる豪華な建物の暴露動画を公開。これも市民の怒りを増幅させたようだ。[br][br] 当局は過去の経済事件で懲役3年6月の執行猶予付き有罪判決を受けた同氏が出頭を怠るなど違反を重ねたとして逮捕した。本人は罪状について「政治的なでっち上げ」と訴えているが、2月初旬の審理で猶予が取り消され、実刑に変更される可能性があるという。[br][br] 秋の下院選を控え、危険な人物として隔離するとすれば論外だ。今回の事態は新型コロナウイルス禍も加わって長引く経済低迷や抑圧体制下で不満が鬱積(うっせき)していることをうかがわせた。[br][br] 異論弾圧だけではさらなる民心離反を招き真の安定を確保できないのは明らかだ。とすれば、強権による政敵排除を改める以外に道はない。プーチン氏はかつて「政党間の競争こそ国を発展させる」と述べたことを思い起こすべきだ。[br][br] ナワリヌイ氏は昨年夏に国内移動中に毒殺未遂に遭い、搬送先のドイツ・ベルリンで奇跡的に回復した。問題の毒物は旧ソ連が開発した致死性の高い化学兵器ノビチョク系の神経剤であることが化学兵器禁止機関(OPCW)によって確認された。ロシア当局は一貫して関与を否定しているが、「抹殺」を図ったとの見方が支配的だ。[br][br] こうした経緯から国際世論は厳しい。バイデン米政権など西側は「断固たる対応」を掲げ、ナワリヌイ氏の即時釈放を要求した。米ロは2月に期限が切れる新戦略兵器削減条約(新START)の延長で合意したが、米側はナワリヌイ氏の問題など「懸念事項」にも言及、今後も難題となりそうだ。[br][br] 事実上、終身大統領の座を手にしたプーチン氏は政敵におびえるもろさをさらけ出した。自らの政治的遺産として公明正大な選挙の場を整えるよう望みたい。