天鐘(1月28日)

より速く、より高く、より強く。より優れた者を目指すという意味で、五輪や競技スポーツでよく使われるフレーズだ。その力と技を磨いた先に大記録も生まれる▼この人の記録は「より長く」の先にあった。大相撲の現役最年長力士、序ノ口の華吹(はなかぜ)。5.....
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 より速く、より高く、より強く。より優れた者を目指すという意味で、五輪や競技スポーツでよく使われるフレーズだ。その力と技を磨いた先に大記録も生まれる▼この人の記録は「より長く」の先にあった。大相撲の現役最年長力士、序ノ口の華吹(はなかぜ)。50歳で迎えた先の初場所で勝ち越しを決めた。116年ぶりという偉業に、胸を熱くしたオジサンたちも多かっただろう▼15歳での入門は、千代の富士全盛の1986年。昭和、平成、令和と、3時代の土俵に上がる。残念ながら出世には縁がなく、最高位は三段目。それでも今なお、息子のような相手にぶつかっていく▼番付が全ての世界。年齢と地位を考えれば切なくもある。自身は既に「より強く」は諦め、常に懐に「引き際」をしのばせる。楽しみは「ちゃんこ長」として部屋の後輩を支えることだとか。悠々、飄々(ひょうひょう)と、わが道を行く▼長さゆえに積み重なった白星は、現役では白鵬、鶴竜に次ぐ。一場所7番を思えば、その凄(すご)さが分かる。こつこつ続け、ズンと重い500円玉貯金の趣。それもまた「おまけ」と本人は笑うのだろう▼50代の伝説といえば、サッカーの“キングカズ”こと、三浦知良選手か。見上げるしかない孤高のレジェンドとは違い、こちらは隣で一緒に一杯やりたくなるような中年の星。人生いろいろ。その輝き方もまた、人それぞれだと教えてくれる。