時評(1月6日)

今年は国の在り方を決める上で極めて重要な「エネルギー基本計画」が改定される。脱炭素は世界の潮流だ。菅政権は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」との目標を掲げている。新しい年はその本気度が問われる。まず未来に責任を持てる基本.....
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 今年は国の在り方を決める上で極めて重要な「エネルギー基本計画」が改定される。脱炭素は世界の潮流だ。菅政権は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」との目標を掲げている。新しい年はその本気度が問われる。まず未来に責任を持てる基本計画を作る。そして目標達成に向けて確実に歩み始めなければならない。[br][br] 間もなくバイデン米大統領が誕生し、世界2位の排出大国米国がパリ協定に復帰する。協定参加各国が温室効果ガス削減目標を達成しても今世紀末には3・2度上昇することが判明。危機感が高まっていただけに米国の復帰は世界の温暖化対策の機運を高めるだろう。[br][br] 一方、5位の排出大国ながら依然石炭火力依存度が高い日本には一層厳しい視線が注がれそうだ。政府は昨年末、50年の脱炭素に向けた「グリーン成長戦略」を発表した。絵に描いた餅としないためにも基本計画で道筋を付けることが求められる。[br][br] 現行計画では、30年度の再生可能エネルギーの電源構成比は22~24%。19年度実績はまだ約18%だ。経済産業省は50年に50~60%にするとの参考値案を提示したが、肝心なのははるか先の目標ではなく、そこに至る工程表だ。[br][br] そもそも現行の日本の削減目標「30年度に13年度比26%減」は脱炭素を掲げるにはあまりに低い。再生エネの電源構成比と削減目標。この二つの数字を大幅に高めることを「50年ゼロ目標」の出発点とすべきだ。[br][br] グリーン成長戦略では原発の活用も明記した。だが再稼働に向けた審査は長期化し、地元は慎重姿勢で再稼働はままならない。東京電力福島第1原発事故を経験したこの国で「原発回帰」は非現実と言わざるを得ない。結局、日本も世界の潮流になりつつある再生エネを活用する社会・経済構造に大転換するしか道はないと考えるべきだ。[br][br] 成長戦略には30年代半ばに乗用車を全て電動車にする「脱ガソリン」方針も盛り込まれた。だが電動車にはエンジンも使うハイブリッド車が含まれ、徹底を欠く。電気を使わない水素利用がベストだが課題も多い。政府と産業界は連携し技術革新しながら課題を解決してほしい。[br][br] 21年は脱炭素社会の実現に向け各国の取り組みが加速するのは間違いない。日本は出遅れてはいるがまだ挽回は可能と思いたい。環境・エネルギー政策を主導すべき政府の責任は一層重くなる。同時に電気、エネルギーを使う一人一人の意識も問われる年になる。