時評(12月29日)

2020年の世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大で深刻な打撃を受けた。21年は有効なワクチンの普及が景気浮揚の鍵を握る。期待は大きいが、感染収束に向かうのかは不透明だ。コロナ苦境を乗り切るため、官民の英知を集め、柔軟に迅速に対応してほしい.....
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 2020年の世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大で深刻な打撃を受けた。21年は有効なワクチンの普及が景気浮揚の鍵を握る。期待は大きいが、感染収束に向かうのかは不透明だ。コロナ苦境を乗り切るため、官民の英知を集め、柔軟に迅速に対応してほしい。[br][br] 世界経済はどうなるのか。大規模なコロナ対策で各国とも経済の下支えに全力を挙げているが、視界不良は続く。経済協力開発機構(OECD)が12月に発表した21年の見通しでは、世界の実質経済成長率は4・2%と、9月予測より下方修正した。米国は3・2%、中国は8・0%で、日本は2・3%。[br][br] その一方で日本政府は21年度の実質国内総生産(GDP)成長率について、プラス4・0%とする見通しを発表した。これは追加経済対策によるプラス効果が2%分上乗せされており、楽観的と言わざるを得ない。日本経済研究センターが集計した民間の予測はプラス3・4%で、政府より厳しくみている。[br][br] 追加対策の事業規模は約73兆6千億円で、感染対策のほか観光支援事業「Go To トラベル」延長などだ。日銀も感染拡大で打撃を受ける企業への支援を続ける姿勢を明確にした。金融機関に有利な条件で貸し出す支援策の期限を3月末から9月末へと延長する。[br][br] 政府の大盤振る舞いもあり、普通の不況対策なら十分な内容だが、正体不明の新型コロナが相手なので安心はできない。経済重視が目立っており、変異種などによる感染者急増に迅速に対応できるのか懸念もある。[br][br] 景気回復を確かなものにするには、GDPの5割以上を占める個人消費の増加が不可欠だ。政府が発表した20年12月の月例経済報告は景気判断を据え置いたが、個別項目では個人消費の判断を下方修正した。国内外で新型コロナ感染が再拡大しており、国内旅行などが失速しているためだ。[br][br] 個人消費を増やすには賃金引き上げと雇用の安定が重要である。経団連は21年春闘の交渉方針で、高収益企業はベースアップも選択肢だが、業績悪化企業は「ベアは困難」との慎重な姿勢を示した。賃上げの勢いは弱まっているようだ。人員削減を打ち出す企業が相次いでおり、雇用も悪化傾向にある。政府はこうした実態を直視して政策を進めるべきである。[br][br] ワクチン接種が始まり楽観的な見方も出ているが、コロナ変異種の感染が急増している。油断せずに、コロナとの闘いは続くとの覚悟が必要である。