原発敷地外で使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設(むつ市)の共用案が浮上した。全国の原発では貯蔵プールが逼迫(ひっぱく)し、搬出先となる再処理工場(六ケ所村)も完成延期を重ねる。構想の旗を振る電気事業連合会は、貯蔵対策の柔軟性が高まり「核燃料サイクルの確立に資する」と強調する。[br][br] 果たしてそうなのか。貯蔵量が突如急増したわけでなく、再処理の操業を見通せない状況も今に始まったことではない。東京電力福島第1原発事故から丸10年を迎える。この間も原発の利活用ばかりに注力し、いわば「川下」が抱える積年の課題に真正面から向き合って来なかった怠慢の帰結ではないか。[br][br] むつ中間貯蔵は、運営会社に出資する東電と日本原子力発電の原発から出た燃料を受け入れる。対して共用案は、立地に当たり地元が締結した協定を越えて大手電力の分も集積することを意味する。明確な搬出先が見当たらない中、宮下宗一郎市長が「ゴミ捨て場ではない」と反発するもの当然だ。[br][br] 各社の中で苦しい立場に置かれるのは関西電力だ。原発が立地する福井県から再稼働の前提として中間貯蔵の県外候補地を示すよう求められており、共用案は関電救済との見方が強い。[br][br] 2年前にも関電のむつ共用案が表面化した経緯を踏まえれば不信感は一層募る。構想公表から間髪を置かずに「積極的に参画したい」と発言した関電社長の姿勢は余りに乱暴である。 共用案に対する国の反応も見過ごせない。電事連から報告を受けた梶山弘志経済産業相はサイクル政策上の意義に同調し、その場で幹部を地元説明に同行させると明らかにした。[br][br] 段取りが良すぎはしまいか。ましてこの間、中間貯蔵が操業に向けた審査に合格してから1カ月余り。再稼働を急ぎたい国も歩調を合わせ、水面下ですり合わせていたならば地元軽視のそしりを免れない。[br][br] むつで最長50年にわたり貯蔵する燃料は当初、六ケ所の後継工場に搬出するとされた。だが整備計画は福島原発事故を経て頓挫し、燃料がゴミと化す懸念は依然払拭(ふっしょく)されていない。もっとも日本原燃の工場も24回の完成延期を繰り返し、電事連が「16~18基」で導入を目指していたプルサーマル計画は「30年度までに12基」と実質後退した。[br][br] サイクル政策の大義が資源の有効活用からプルトニウム消費に変容する中、その実現すら危うい状況を示している格好だ。川下の懸念はますます顕在化している。