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 東京都千代田区の国立劇場では11日、政府主催の追悼式が2年ぶりに開かれた。菅義偉首相や天皇、皇后両陛下、遺族代表ら計約210人が参列し、地震発生時刻に合わせて黙とうをささげた。時間の経過とともに被災の記憶が薄れる中、遺族は教訓を語り継ぎ、強く生きていくと誓った。[br][br] 福島県遺族代表の小学教諭斎藤誠さん(50)=宮城県名取市=は当時5歳の次男翔太しょうた君を津波で亡くした。東京電力福島第1原発事故のため、福島県南相馬市小高区にあった自宅周辺には約5年間立ち入れなかった。「震災を風化させず、教訓を語り継ぐ」。津波が想定される南海トラフ巨大地震への対策も求めた。[br][br] 宮城県代表で名取市の高校1年荒川航さん(16)は発生当時、幼稚園児だった。同市閖上ゆりあげ地区に暮らしていた曽祖父母を津波で亡くした。「震災がだんだん記憶から薄れている」と率直に明かし「若い世代にできることは風化し始めている記憶を呼び起こし、後世につなぐことだ」と訴えた。[br][br] 岩手県代表で同県山田町の監査委員を務める佐藤省次さん(71)=宮古市=は「長いようで短いような複雑な思いが駆け巡る歳月だった」と振り返った。震災当時は山田町で暮らし、津波で11人の親族を失った。「平穏な日常に感謝し、強く生きていく」とかみしめるように話した。「各地の災害が報道されると、被災地の皆さんに『負けるな、負けるな』と語りかけている」とも語った。[br][br] 被災者代表で同県宮古市の旅館のおかみ近江智春さん(40)は「悲しみは癒えないが、大好きなまちを守り、未来に進みたい」と力を込めた。津波で知人が何人も命を落とした。祖父が創業した旅館も全壊。常連客に励まされて再建を果たし、現在は三陸の観光業を立て直そうと奮闘中だ。[br][br] 天皇陛下は「これからも私たち皆が心を合わせて、被災した地域の人々に末永く寄り添っていくことが大切であると思います」と述べられた。陛下の追悼式参列は初めて。菅首相は「大きな犠牲の下に得られた貴重な教訓を風化させてはならない。災害に強い国づくりを進める」と語った。[br][br] 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で昨年の追悼式は中止だった。今回は感染防止策として招待者を大幅に減らし、マスクを着用。検温や手指の消毒などを行った。政府は追悼式の主催を今回までとする見通し。 政府主催の追悼式で献花する、(左から)岩手県遺族代表の佐藤省次さん、宮城県遺族代表の荒川航さん、被災者代表の近江智春さん、福島県遺族代表の斎藤誠さん=11日午後3時48分、東京都千代田区の国立劇場(代表撮影)