【東日本大震災10年】移転跡地、スポーツ施設整備に活路

 岩手県大槌町で整備が進む野球場=2020年12月(小型無人機から)
 岩手県大槌町で整備が進む野球場=2020年12月(小型無人機から)
東日本大震災を受けて津波被災地の住民らに移住を促した国の防災集団移転促進事業。その移転跡地に全国からの交流人口増加や地域住民の触れ合いを目的としたスポーツ施設を整備する動きが岩手、宮城、福島3県の少なくとも10市町で進む。一方、新型コロナウ.....
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 東日本大震災を受けて津波被災地の住民らに移住を促した国の防災集団移転促進事業。その移転跡地に全国からの交流人口増加や地域住民の触れ合いを目的としたスポーツ施設を整備する動きが岩手、宮城、福島3県の少なくとも10市町で進む。一方、新型コロナウイルスの影響で計画が白紙に戻ったケースもある。[br][br] ▽トラック新設[br][br] 福島県新地町は昨年7月、防災緑地公園内に自転車やスケートボード用の施設「しんちパンプトラック」をオープンした。国際基準のレーシングコースや初心者向けコースがあり、幼児からベテランまで集う。福島県相馬市の会社員井上諭さん(43)は月3~4回、息子翼君(8)の練習に付き添っている。「他の競技にあまり関心を示さなかった息子が自転車には夢中になった」と喜ぶ。[br][br] 町は震災の翌年ごろから跡地を防災緑地公園にしようと本格検討。早期にビジョンを決めたため、民有地の買収など用地確保も進んだ。[br][br] ただ、町が買い取った42・8ヘクタールのうち12・1ヘクタールの用途は未定。担当者は「ここが話題になれば、周辺の土地に興味を持つ事業者が現れるはず」と期待するが、2月13日に新地町を含む福島、宮城両県で最大震度6強の地震が発生。コースにひびが入り、やむを得ず一部を走行禁止にした。[br][br] ▽復旧[br][br] 復興事業の中で取り壊された施設を復旧させる自治体も。岩手県大槌町は野球場とサッカー場の完成を間近に控える。震災前は内陸部に立地していたが住宅や県立病院の移転先となったため取り壊され、再整備中だ。[br][br] 町によると、かつて両グラウンドは一つの運動公園にまとまっていたが、新施設は1キロ程度離れることになった。担当者は「集約した方が他競技同士の交流も生まれやすいと考えたが、総事業費などを検討した結果、断念した」と悔しがる。[br][br] ▽先見通せず[br][br] 新型コロナのあおりを受けたのは跡地のうち44・6ヘクタールで民間の活用を募集していた仙台市。温泉や飲食店の入る複合施設など、大半の区画で利用計画が決まっていた。[br][br] しかし、19・5ヘクタールにキャンプ場や野球場などの建設を予定していた地元の企業が昨年11月に全面撤退。代表の男性(67)は「コロナで人の動きが低下し、先行きが見通せなくなった」と説明する。市は改めて公募を行い、今年6月に新事業者を決める考えだ。担当者は「新たな町づくりのブレーキとなったのは間違いない」と肩を落とした。 岩手県大槌町で整備が進む野球場=2020年12月(小型無人機から)