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 中国海警局船に武器使用を認めた海警法が施行されてから3月1日で1カ月を迎える。日本政府は沖縄県・尖閣諸島周辺への上陸を海警局船が強行すれば、相手に致命傷を与えかねない「危害射撃」に踏み切る可能性に言及。海警法に反発する国内世論に押された格好だが、日中双方が武器使用をほのめかしてけん制し合う状態は不測の事態にエスカレートする危険性をはらむ。[br][br] ▽個別状況[br] 「尖閣は疑いもなく、わが国の領土だ。しっかり守っていかなければならない」。岸信夫防衛相は27日、視察先の東京都府中市で尖閣防衛への決意を改めて表明した。[br][br] これに先立つ25日の自民党会合で、尖閣対応を巡り政府から新たな見解が示されていた。外国公船による尖閣上陸の強行を凶悪犯罪と認定し、危害射撃する可能性があると海上保安庁担当者が説明したのだ。危害射撃は警察官職務執行法に基づく警察権の行使で、公船は海警局船を念頭に置いている。[br][br] 警職法は自衛隊にも準用される。岸氏は、自衛隊の危害射撃に関し「個別の状況に応じて判断する」と述べ、含みを持たせている。[br][br] ▽不満[br] 基本的に危害射撃は正当防衛・緊急避難に限定されてきた。現行法制の範囲内で尖閣上陸の阻止にも適用できると政府が明確にした背景には、海警法に反発する保守層を中心とした世論の高まりが影響している。[br][br] 海警法施行後、世論に突き動かされる形で、与野党から法整備を政府に求める声が上がり始めた。ただ、政府は、国際法との整合性から新たな法整備に慎重な姿勢を崩していない。[br][br] これに対し、自民若手議員は「尖閣対応に政府は及び腰だ。これでは領土を守り切れない」と不満を隠さない。自民内では「中国は海警法で尖閣を狙い撃ちしている。日本も中国と張り合うための法整備が必要だ」(中堅議員)との意見が相次ぐ。[br][br] 政府への不満が自民党内に充満する中、危害射撃に関する政府見解が表に出てきた。保守層に政府見解は好意的に受け止められた。政府関係者は「ガス抜きの必要があった」と漏らす。[br][br] ▽緊迫[br] 海警法が施行された今月1日から26日までに、海警局による尖閣周辺の領海侵入の日数は6日に上り、今年1月の3日より倍増した。海警局船は機関砲のようなものを搭載し、時に日本漁船に接近する動きも見せるようになった。警備に当たる海保の巡視船との間で、現場は一触即発の緊迫の様相を呈する。現場海域にいた漁船関係者は海警局船について「にらみを利かせ、威圧してくる感じだった」と不安な表情で語った。[br][br] 海保の巡視船で海警局船に対応しきれなくなった場合、政府は防衛相が自衛隊に海上警備行動を発令し、警察権を引き継ぐ段取りを想定する。防衛省幹部は不安を口にする。「一発の銃声が、大規模な軍事行動に発展しかねない」 沖縄県・尖閣諸島