新型コロナウイルスを巡り政府は26日、65歳以上の高齢者を含め4千万人超のワクチンを6月末までに全国に配布する方針を打ち出した。世界中で起こるワクチン争奪戦で先行きが見通しにくい中、わずか4カ月で確保する。遅れれば一般の人の接種時期にも影響しかねない。現状と同じペースだと約19カ月かかる計算。河野太郎行政改革担当相の「公約」の実現性を探った。[br][br] 「6月いっぱいで完了できるスケジュールでファイザーと大枠合意した」。ワクチンの総合調整を担う河野氏は26日、「不確定」「見込み」を連発した24日の記者会見から打って変わって、3600万人の高齢者と470万人の医療従事者を合わせた4070万人分の確保を明言した。[br][br] 国が明らかにしている自治体などへの配送計画は、医療従事者向けの一部で140万人分。高齢者向けも一部で55万人分となる。残りの時期や分量の詳細は示さないまま、確保できるとの「結論」を示した形だ。[br][br] 米ファイザー社からの供給を見ると、2月に輸入したワクチンは42万人分。今回発表した計画では3月1日以降、ワクチンが毎週1便到着する。具体的な数字も示した。1日の週から5回に分けて最大15万~50万人分が届き、最大で計約133万人分を新たに確保するとしている。[br][br] 2月の42万人分と足し合わせ175万人分となる。これは全体の4%強にすぎない。 仮に、3月と同じペース、同程度の数量が日本に届いた場合、医療従事者や高齢者のうち4月以降に確保が必要となるのは3895万人分。週1便で1回最大50万人分の供給だったとすると、約78週間で約19カ月かかる。[br][br] 6月完了に間に合わせるには4~6月の13週間に、毎日約43万人分が届かないといけない。毎週1便だと、約300万人分が届くのが条件となる。河野氏は、ファイザーのワクチン製造ラインの増強が本格化するのは5月になるとし、4月までは大幅な増量は難しい点を示唆する。4月は3月に来る週最大50万人分が毎週届くと仮定し、5月から大量に輸入できるなら、9週間は毎週410万人分が届く必要がある。[br][br] 実務に不可欠な途中経過の日程と量が示されない中、国の方針に振り回される格好の自治体。国から配送される超低温冷凍庫の容量に限りもあり、日々、接種する住民の人数をどう調整するかといった課題を抱える。宮城県の担当者はこう強調する。「終わりの時期だけ示されても計画は立てられない。供給の時期と量が具体的に分からないと円滑に進まない」