【原発事故10年】生徒に判断の「物差し」を 生徒に独自の放射線教育

 放射線の授業を行う福島県立安積高の千葉惇教諭=2月、福島県郡山市
 放射線の授業を行う福島県立安積高の千葉惇教諭=2月、福島県郡山市
放射線の正しい知識を高校生に身に付けてほしいと、福島県で独自の授業を続ける高校教諭がいる。県立安積高(郡山市)の物理教諭、千葉惇さん(34)。「放射線はどこからが危険なのか自分で判断できる物差しを作ってあげたい」と話す。 授業ではアルファ線.....
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 放射線の正しい知識を高校生に身に付けてほしいと、福島県で独自の授業を続ける高校教諭がいる。県立安積高(郡山市)の物理教諭、千葉惇さん(34)。「放射線はどこからが危険なのか自分で判断できる物差しを作ってあげたい」と話す。[br][br] 授業ではアルファ線やベータ線など難解な知識の学びには重点を置かない。「放射線教育の本来のゴールは判断力を付けることだから」と、避難区域の現状や、食品の放射性物質基準値の国別比較などに半分以上の時間を割いている。[br][br] 授業のきっかけは東京電力福島第1原発事故直後の2011年春、赴任した県立本宮高(本宮市)の男子生徒から言われた一言。「僕たちはもう健康な子どもがつくれないんですよね」。直前の3月まで大学院で原子核物理学を研究していた千葉さんは「そうした質問が出たこと自体がショックだった」と振り返る。[br][br] しかしまだ事故が福島県民にどんな影響を与えるか分からなかった頃で「授業するのは勇気がいった」。将来の健康被害や次世代への影響を否定する13年の国連科学委員会の報告で、葛藤はようやく和らいだ。[br][br] 放射線教育は政治的な論争につながりやすいため、取り上げる教員が少ないと感じている。「やらない方がリスクはゼロですからね。私も授業をしているだけで周りから『反原発派なのか』と言われる」と話す。[br][br] さらに教え子には原発周辺から避難している生徒もいる。健康への影響を否定する結果を基に、被災地の放射線量は大したことはなかったと話せば「あんなに苦労した避難は無意味だったのか」と傷つけてしまうかもしれない。[br][br] それでも10年近く続けるのは生徒が「ありがとう」と感想を書いてくるから。全町避難した富岡町出身の生徒が一昨年、「授業を受けて良かった」と書いてきたのは特にうれしかった。「事故の当事者がそこまで言ってくれ、自分のやってきた授業が間違いじゃなかったと思えた」と笑顔を見せた。 放射線の授業を行う福島県立安積高の千葉惇教諭=2月、福島県郡山市