【32年夏季五輪選定】招致新方式、透明性疑問視も

 2032年夏季五輪・パラリンピックの最優先候補地としてブリスベンが選定され、記者会見するIOCのコーツ調整委員長(右)=2月25日、ブリスベン(AP=共同)
 2032年夏季五輪・パラリンピックの最優先候補地としてブリスベンが選定され、記者会見するIOCのコーツ調整委員長(右)=2月25日、ブリスベン(AP=共同)
国際オリンピック委員会(IOC)の理事会は2月下旬、2032年夏季五輪・パラリンピックの最優先候補地にオーストラリア東部のブリスベンを選んだ。IOCは19年に選定の仕組みを大幅に改革し、決定は原則7年前とした規定を撤廃。招致熱が冷え込む中で.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 国際オリンピック委員会(IOC)の理事会は2月下旬、2032年夏季五輪・パラリンピックの最優先候補地にオーストラリア東部のブリスベンを選んだ。IOCは19年に選定の仕組みを大幅に改革し、決定は原則7年前とした規定を撤廃。招致熱が冷え込む中で有力都市を早めに確保する狙いだが、大会11年前の唐突な開催地一本化の動きに、透明性を疑問視する声も上がっている。[br][br] ▽疑念 [br][br]「19年総会で、満場一致で決めたルールに従っている」。バッハ会長は、密室といぶかる記者の質問に真っ向から反論した。従来は約100人のIOC委員が投票して複数の立候補都市から選出したが、既存施設活用の計画や冬でも温暖な南半球の気候を評価されたブリスベンが事実上、一本釣りされた今回は15人で構成する理事会で決定。今後、同都市との本格的な協議で開催要件を満たすと判断されれば、総会で承認を諮る流れだ。[br][br] 疑念に拍車を掛けたのが、オーストラリア人のコーツ副会長の存在。東京五輪の準備状況を監督する調整委員会のトップも務める同氏は、バッハ会長の腹心として知られる。それでも、同会長はブリスベンを理事会に推薦した将来開催地委員会の独立性を強調し「コーツ氏は32年五輪に関する理事会の議論に一切加わっていない」と訴えた。[br][br] ▽札幌[br][br] 32年五輪開催に興味を示していたインドやカタール、インドネシア、ハンガリーといった国々は、前触れなく事実上の招致レース脱落を告げられた形だ。日本オリンピック委員会(JOC)のある理事は「10年以上先となると各国の財政状況も変わりうる。突然の発表には正直驚いた。バッハ会長はちょっと、やり過ぎな気もする」と語る。[br][br] IOCの動きは、日本にとっても無縁ではない。JOCは昨年1月、30年冬季五輪開催を目指す札幌市を国内候補地に正式決定した。28年夏季五輪のロサンゼルス招致に成功した米国は、ソルトレークシティー開催の目標を30年から34年大会に変更する可能性があり、ピレネー・バルセロナ(スペイン)は30年以降も見据えた将来的な開催に興味を示す段階だ。[br][br] 22、26年の冬季五輪は住民投票による否決などで撤退が相次ぎ、最終的にそれぞれ2候補の争いとなった。24、28年夏季五輪を同時決定したIOCには、リスク回避のためのなりふり構わぬ姿勢が目立つ。「バッハ氏は札幌を高く評価していると聞く。早ければ年内にも最優先候補地を選ぶ可能性はあるだろう」。IOC関係者は、潮流の変化を感じ取っている。(ジュネーブ共同) 2032年夏季五輪・パラリンピックの最優先候補地としてブリスベンが選定され、記者会見するIOCのコーツ調整委員長(右)=2月25日、ブリスベン(AP=共同)