【緊急事態再延長】首相苦境、目算なき判断

 緊急事態宣言を巡る首相らの発言(似顔 本間康司)
 緊急事態宣言を巡る首相らの発言(似顔 本間康司)
菅義偉首相は首都圏への新型コロナウイルス緊急事態宣言を21日まで延ばすと決めた。だが確執を抱える小池百合子東京都知事との主導権争いを意識するあまり、2週間で解除できるか十分な目算を持って判断したようには見えない。感染状況改善への決定打もなく.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 菅義偉首相は首都圏への新型コロナウイルス緊急事態宣言を21日まで延ばすと決めた。だが確執を抱える小池百合子東京都知事との主導権争いを意識するあまり、2週間で解除できるか十分な目算を持って判断したようには見えない。感染状況改善への決定打もなく、苦境の中の再延長となる形だ。首相の決断の裏には、25日開始の聖火リレーなど東京五輪・パラリンピックへの影響を避けたいとの意識もあった。[br][br] ▽丸のみ[br][br] 「私も悩み、関係する閣僚と何回も話し合った。ぎりぎりの選択だ」。5日の参院予算委員会。首相は決断に際し、揺れた胸の内を吐露した。[br][br] 首相の言葉通り、再延長が事実上決まったのは2日の閣僚会議だった。首相は「指標の下がり方が弱い。今回は再延長で仕方ない」と腹を固めていた。[br][br] 意見が分かれたのは延長幅だった。西村康稔経済再生担当相は「1カ月はどうか」と提案。西村氏は指標を確実に下げたい専門家の意向を踏まえていた。だが首相は2週間を選択。小池氏ら首都圏の知事に2週間程度の再延長を政府に要請する動きがあるとして、後手批判を恐れた首相が「丸のみ」した。[br][br] では2週間にどんな意味があるのか。政府筋は「21日までの解除を実現できる科学的根拠はなく、確たる見通しもない。理屈は後でつけて押し通すということだ」と官邸内の雰囲気を代弁する。[br][br] 政権幹部は「国民にどう心理的影響を与えるかについては考慮した」と解説する。延長幅がさらに1カ月と言われたら、耐えてきた国民も心が折れるというわけだ。[br][br] ▽象徴[br][br] 2月下旬の段階では早期の全面解除を目指していた首相。姿勢転換の背景には、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の意向があった。3月10日からのIOC総会までに宣言を解除できないと、五輪開催に黄信号がともりかねない―。官邸内で先週共有されていた見立てだ。だが今週に入って「この段階で宣言が続いているかどうかは、開催判断に影響しない」とのバッハ氏の考えが首相の耳に届き、再延長の条件を一つクリアした。[br][br] 一方、25日に始まる聖火リレーは懸念材料だった。開催都市の東京が宣言下にある中での実施に、国際社会の理解が得られるのか未知数だからだ。開催機運を盛り上げる「象徴的イベント」(首相周辺)だけに、延長幅は21日までとした首相の判断に影響を与えたのは間違いない。[br][br] ▽クラスター[br][br] 首相が再延長を余儀なくされたのは、首都圏での指標が改善しないためだ。専門家の多くは、感染源が追えない「見えないクラスター(感染者集団)」の存在が一因と分析する。実際、4日までの東京の感染者データ(1週間平均)では、約半数は経路不明のまま。宣言が再発令された1月より割合は減ったが、高止まりが続く。東京の北区保健所の前田秀雄所長は首都圏について、人口が多い上に匿名性が高く「クラスターが起きても全体像をつかむのは容易ではない」と指摘する。[br][br] 諮問委員会メンバーで、首相に助言する内閣官房参与も務める岡部信彦川崎市健康安全研究所長は記者団に対し、こう不安を漏らした。[br][br] 「今日見ている(感染者数などの)データが2週間後に良くなるとは期待していない。数字が上がらなければいいなというのが私の意見だ」 緊急事態宣言を巡る首相らの発言(似顔 本間康司)